二人の降谷05
あれから目まぐるしく始末書や別件の報告書等に終われ、漸く仕事が落ち着いたと思った頃には日が高く登っていた。「あー…もう昼か」
凝り固まった肩を解すようにぐぐっと大きく伸びをする。降谷はきょろりと辺りを見渡し秋良を探すが、どこにも見当たらなかった。目立つ容姿なのは自分でも理解しているので、見当たらないという事は近くに居ないということだろう。
「……アイツどこいったんだ?」
そろそろお昼ご飯を食べないとと考えていたので風見に声を掛けてから秋良を探しに行く事にした。
恐らくそんな遠くに行っていないだろうと当たりをつけて歩いていると、エレベーター付近で少しだけ困ったように笑っている秋良の姿を発見した。
どうやらコンビニに行っていたらしい。手にはコンビニのレジ袋を掲げ、どうやら誰かと話をしているようだった。
───あれは事務方の…。
前に一度話し掛けられた事かある。亜麻色の髪にぱっちり二重、化粧はナチュラルで見た目は好みの可愛らしい女性だ。しかしそんな可愛らしい見た目とは裏腹に、彼女は男漁りが激しいと専らの噂である。そんな女性にどうやら捕まってしまったのだろう。会話は聞こえないが一方的に女性が話し掛けているようだ。秋良はお人好しな所があるから女性を無下にできず話を合わせて会話している…と言った所か。
「…全く、仕方ないな」
降谷はやれやれと肩を竦めると、ポケットから携帯電話を取り出すなり秋良の番号をタップした。
少しの間のあと、秋良の携帯電話が鳴り出した。
秋良は女性に断りを入れポケットから携帯電話を取り出す。そこで漸く表示されている降谷の番号に気付いたのか、少しだけ目を丸くすると女性から距離を置いて電話に出た。
『もしもし?』
「馬鹿。何捕まってんだよ」
その言葉に秋良はすぐに降谷は近くにいると気付いたようだ。きょろりと辺りを見渡し、陰に隠れて電話する降谷の姿を見つけ頬を緩めた。
「急ぎの仕事だって言って切り抜けて公安の執務室に戻って来い」
『うん、分かった』
それだけ聞くと降谷はすぐに通話を終了させ、この場から立ち去る。万が一降谷と秋良が一緒の所を見られたら場が混乱するからだ。公安のみんなには言ったが、その他の人間に秋良の存在を明かすメリットはひとつもない。今まで通りバレないようにした方が今後の為になるし、何よりFBIが秋良の存在を知ってしまった以上、これ以上周りにバレるわけにはいかなくなったのが現状である。
降谷があの場から立ち去ってすぐに、秋良が慌てたように公安のフロアに戻って来た。
「ごめんね、ゼロくん。助かったよ。コンビニ行ってお昼買ってきた帰りに捕まっちゃって…。適当に買ってきたから一緒に食べようよ」
「あー昼飯買いに行ってくれてたのか」
だからコンビニのレジ袋を持ってたのか、と言えば「そろそろお腹空く頃だと思って」と笑う秋良。
「それに、僕がいるからゼロくんは外に食べに行くって絶対言わないと思ったんだよね」
二人で外に食べに行くとなると確実に秋良の存在がバレてしまう。その為確かに降谷は何か買って二人で食べようとは思っていた。しかしそれをまさか秋良に見破られていたとはと驚いたように目を瞬いていると、秋良は少しだけ得意げに笑いながらこう言った。
「ゼロくんの考えてる事なら結構分かるよ、僕。お兄ちゃんだからね」
…なんて言いながらウィンクされた。