手のひらに 

視界を遮断したままジロちゃんが帰ってくれるのを待っていると、ベッドが跳ねた。この感じ、隣に座った感じですか。

なに居座ってんだと思った直後、左耳に息がかかった。


「そのまま放って帰れない。」

「ひっ…!やめ!やめてくれない耳元で!!」

「えっ、マジどうしたの?」


左隣すぐにジロちゃんの驚いた顔が見えた。
しまった。つい顔から手を離してしまった。防御力が絶望的に低い!!

すぐさま顔を手で隠そうとしたら、ジロちゃんに手首を掴まれた。


「顔赤くない?」

「あぁ……あ、風邪気味かもしれなくて…うつしちゃ悪いから、今日は帰ってほしい。」


風邪な訳ないが、こうなったら仮病で乗り切るまで。明日学校で聞かれても一晩寝たら治るタイプの風邪だったって言えば平気だ。

隣に座るジロちゃんの顔をとても直視していられなくて、さりげなく下を向こうとしたら顎を持ち上げられた。


「風邪じゃないでしょ?」

「えっ…?」

「だって、俺のこと見て赤くしたもん。ちゃんと見てたよ。」

「あ、あ……」

「ねぇ、なんで?」


ジロちゃんの両手に両頬を挟まれた。
今まで意識してこなかったが、ジロちゃんの手ってこんな大きかったのか。顔面包み込むほど。

しかしなんだこの状況。顔を挟まれ身動きが出来ないため、嫌でもジロちゃんと真正面から向き合わなければいけないじゃないか。

泣きかけ寸前の悲惨な表情になっているであろう私は、ジロちゃんの手首を掴んで引き離そうとした。でも一向に離れようとしない。

私の不可解な様子を見て、ジロちゃんは今まで見たこともないような悲痛な表情で言った。


「名前、何かあった…?」

「……。」

「なんで、なんでそんな顔すんの?これって俺のせいなの?」


とうとう地獄の状況に耐えられなくなった私は、熱くなった目から涙をこぼした。

涙でぼやけてジロちゃんの顔が見えない。
あっ泣いた方がジロちゃんの顔を見なくて済むのいいな!

本当はいいわけないが、逆に泣くのをやめろと言われても涙を制御することができないので、どうしようもない。お手上げ。


「なんだよ〜それ〜…」


消え入りそうな声で呟いたジロちゃんは、私の顔を挟んだままキスをしてきた。
どう考えても今はキスするタイミングじゃないのだが。これが見納めってやつですかい…

-5-

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わらびもち

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