手のひらに
夕食後しっかりと歯磨きを済ませた私は、眠気が来るまで自室のベッドで暇を持て余していた。
もやもやした気持ちのせいでカレーが喉を通らないのでは?と心配していたが、完食。むしろおかわり頼むくらいの腹減り具合。
流石お母さんのスタミナカレーはどんな時でも食欲をそそるぜ!
時計を見ると、まだまだ7時を回ったばかり。
寝る準備万端だけど、やっぱり寝るには早すぎるかな〜。というか眠くないし……そうだ!みんなへの謝罪の言葉考えて、メモしておこうか!
メモ機能を開きながらスマホ片手に布団の中へ潜り込もうとすると、コンコンと、ノックの音が聞こえた。
「おいおいおい…嘘だと言って…」
窓から聞こえてきたノック音。ここは3階のため、スパイダーマンのように壁をのぼれる人物でなければ、100%ジロちゃんの仕業。
即座に居留守を使おう!と思いついたが、この時間、電気がついてるにも関わらず誰も部屋にいないのはおかしい。
いや、寝てたって言えば誤魔化せるかもしれない。それともイヤホンしてて気付かなかったとか、言い訳は他にもたくさん
「名前〜?」
カラカラ、窓の開く音がした。
私とした事が今日に限って窓の鍵を閉め忘れるなんて。とんだアンラッキーデーさ。
心臓を死ぬほどバクバクさせながら窓の方を凝視していると、しまっていたカーテンからジロちゃんが顔を覗かせた。
「あれっ?名前いるじゃん〜!」
私が居る事を確認し、ジロちゃんはカーテンの間をすり抜け入室。
今日学校で会ってるのに、まるで何年ぶりかの再開ごとく久し振りな感じがして、心臓がおかしなことになってきてて笑いそうになる。
何で今日このタイミングでここに来てしまったんだ君は。正直言うとすごく会いたくなかったよ。家がすぐそこ、同じクラス、おまけに席が後ろなので会うのは絶対避けられない運命だが、今夜くらいは、会わずに…
その場しのぎでいつも通り対応すればいいものの、あろうことか声が出ない。体を動かすことは愚か瞬きすら。
ベッドの上で石化していると、窓を閉めていたジロちゃんがカチコチに固まる私を見て首を傾げた。
「どったの、なんでさっきから黙ってんの?」
「………」
「おーい、名前〜?」
顔を覗き込んできたジロちゃんの顔が近くて、死ぬほどびっくりして、咄嗟に両手で顔を覆うというワケのわからない行動をとってしまった。
ああこれはまずい。まずいったらまずい。発火してるんかってくらい熱いぞ。
明らか様子のおかしい私に、ジロちゃんは慌てた声を出した。
「どうしたの、大丈夫!?」
「……大丈夫、あの、今日は帰ってもらっていいですか。」
顔を手で覆ったまま、ありったけの力と声を振り絞って、ジロちゃんにお帰りいただくようお願いした。
今まで散々キスしてきた相手にすごいな。これが恋の魔法か。
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わらびもち