手のひらに 

「やめたいなんて勝手なこと言ってごめん、他の子にも謝りに行きます。でもこれからは、好きな人とだけしたいから…」

「好きな人いるの!?」


バッと体を離したジロちゃん。さっきから動きが騒がしい。表情もコロコロ変わって面白いな。1日中見てられそうだ。


「今日、その人が好きなんだってわかってね、それでキスフレはやめようと思ったんだ。」

「好きな人とだけしかしたくない?俺とはもうしたくない?」

「好きな人としたいよ。」

「えええ!?」


悲鳴に近い声を上げながら、ジロちゃんは勢い良くベッドへ倒れ込んだ。
好きな人としたいと言っただけでジロちゃんとしたくないなんて言っていないのだが。

それでもジロちゃんのはっきりとした気持ちがわからないから、告白してもし疎遠になったりしたらと思うと、なかなか踏み切れないぞ…

私に背中を向ける形で横になっていたジロちゃんの隣で、肘をつきながらうつ伏せになった。


「ジロちゃんも、できれば好きな人としたいと思わない?」

「……思う。」

「うん…でも、私に付き合ってくれてただけよね?無責任な事してごめん。これからはちゃんと、好きな人と」

「だからしてたじゃんか。」


さらっと言われて、一瞬、ちょっと何言ってるのかわからない状態になってしまった。

今のは、言うなれば「今まで好きな人としていた」ということで大丈夫なのでしょうか。
つまり期待してもいいんだな。私を好きだって、確信していい…のか…?

ジロちゃんは寝返りをうって私と同じようにうつ伏せになると、何も言えないでいる私の顔を見て笑った。


「好きなんだよね〜俺。名前のこと。すっげー好き。」


へらへらっと笑うジロちゃんは、誰がどう見ても無理してるなという感じ。

ごめんよ本当に。同じ気持ちだとわかった私は今嬉しさ頂点マックスで直ちにジロちゃんを押し倒してキスしまくりたいくらい気持ち急上昇。

昂る胸の高鳴りを抑えるのに必死な私に対して、ジロちゃんは切ない表情をしている。


「本当は言うつもりなかったんだけどさ〜なんか言っちゃった。ごめんね〜」

「どうして言うつもりじゃなかったの?」

「名前に嫌われたりしたらイヤだったからさ〜」


私もついさっき同じこと思ってたよ!!
好きな気持ちや思ってた事まで被ってテンション上がりまくりの私だが、何故かそれを表に出せない。
好きだってわかって、とてつもない安堵感に包まれているせいだろう。

私の気持ちを伝える前に、少しだけ、ジロちゃんの気持ちを聞き出そうか…
今のジロちゃんはどこか吹っ切れていて、なんでも喋ってくれそうな雰囲気だ。


「そう思ってくれてた事が不思議だよ、私は他にもキスフレを作るような人間なのに。」

「ううん、俺も一時期は名前の他にキスフレ作ってたC〜」


えっ?いや、えっ?いたんだ…おお、おう。まぁまぁまぁ!人のこと言えないからそこは!!

別段聞きたくなかった事を言われてテンション50%くらいまで急降下する中、ジロちゃんは話を続けた。


「中1の頃の話だけどね〜名前が俺以外にキスフレ作り出した時の頃。名前が作るんなら俺だって!みたいなさー」

「そうだったの…」

「でもすぐに作るのやめちゃった。これってなんか違うな〜って思って。」

「すぐに?なんで…」

「だって俺がキスしたいのは名前だもん〜結局、名前が別の奴としてるのが気に食わなくて、ヤケになってただけだってわかったからさ。もう作ってないよ〜」


あの頃の私は単にキスをするのが好きなだけの愚か者だったため、ジロちゃんの気持ちには全く気付けなかった。

いや、今もこうして話してくれなかったら、恐らくジロちゃんの気持ちはわからなかったかもしれない。

中1の頃からということは、それまでずっと、私の事を想ってくれて……?
なにその健気さ5000%エピソード…つら…

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わらびもち

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