手のひらに
「私に他のキスフレがいる状態で、なんで平気だったの…」
「他の奴としてるって考えないようにしてたからね〜。それに名前とキスできる関係になれただけ嬉しかったもん、俺!名前とは話してるだけでも楽しいC!」
相手には想われずに、自分だけ想い続けて、その上他の人とキスしてるってわかってて尚ずっと、だと?
タイムマシンがあるなら、中1の頃の自分に会いに行きたい。そして一発お見舞いしたい。魂のこもったゲンコツを。
ジロちゃんの多大なる健気さに、また涙腺が緩んできた。
「今でも、好きでいてくれてるの?」
「大好きだよ。大好きだからもうわがまま言わない!キスフレもやめる!」
「ジロちゃん、私…」
「ごめん俺もう寝る!好きな人とうまくいくといいね!」
無理に作った笑顔でそう言うと、ジロちゃんはベッドから起き上がった。
最後までそんな健気な子のままで行かないでくれ。
そのまま窓の方へ行こうとしたので、私は大慌てになって後ろからジロちゃんに飛びついて引き止めた。
私がいきなり抱きついてきた事により驚いたジロちゃんが、後ろを振り返ろうと必死に首をひねっている。
「ごめん、ごめんなさい!」
「えっ!えっ!なになに!?」
「ジロちゃん!私の好きな人はジロちゃんだから!」
「はっ……えええええ!?」
ここでふと気になった。ジロちゃんよく叫ぶけど、一階に居るお母さんに聞こえてないかなと。
聞こえていたとしても、うちの両親はジロちゃんが家に居ても全く不信感を抱かないタイプの両親だ。
ジロちゃんとも、ジロちゃんの両親とも昔から仲が良いので、さして問題はない、はず!
ふと会話の内容を聞かれていたらと心配になったが、壁はそんなに薄くないから、大丈夫か…?
「ごめん、ジロちゃんが好きって言ってくれたのが嬉しくて、調子に乗りました。」
「ひっ、ひどE…俺こう見えてすっげぇ決死の思いだったんだけど!」
「本当にごめんなさい。あまりにもかわいかったもんだから、その、意地悪を…」
「ちょっ!恥ずかCーーー!!」
背中に抱きつくのをやめてジロちゃんを見ると、両手で顔を覆いながら頭をブンブンと振っていた。
ジロちゃんがこんなに照れるなんて…動画に収めて亮と岳人に送りつけたいくらいレアだ。
あの2人からしたら「なんだこれ。儀式?」な動画だろうが。
心のアルバムに収めておこうと恥ずかしがるかわいこちゃんを眺めていたら、ジロちゃんは手で顔を覆うのをやめてこちらを向いた。
「じゃあさ、これからもキスしていーよね?だって俺、名前の好きな人だC!」
「うん、私も好きな人としたい。ジロちゃんと。」
「うわぁ!超うっれC〜〜!!」
今日一番の大声を上げたジロちゃんは、再びベッドの上に倒れ込んだ。
おやおやそんな事をしていいのかい?
今の私はジロちゃんへのほとばしる熱い想いを抑えられない猛獣だが?
「幸せすぎて今日は眠れないかも〜!」
そんな嬉しい事を言っておいて寝ちゃうのがジロちゃんという人だろう。
ベッドの上に腰を落として、仰向けに寝っ転がるジロちゃんを見下ろした。
私は今日好きだって気付いたけど、ジロちゃんはずっと前から好きでいてくれたんだよな。
差がね、差がありすぎるんだ。
好きな人と両想いになれるって嬉しいことだけど、長い間想ってくれてたジロちゃんはもっと幸福度高めだったりするのか…何倍くらい違いがあるんだ…ジロちゃんの気持ちを蔑ろにしてきた分の埋め合わせ、存分にさせてもらうぜ…!
手始めに何をしよう!やはりここはキスか!愛のこもったやつ!などと考えていると、ジロちゃんが幸せそうな笑顔で私に声をかけた。
「もう名前に好きって言うの、ガマンしないからね〜」
はい無限大に愛おしい〜!!
とうとうジロちゃんへの想いに我慢ができなくなった私は、仰向けに寝っ転がっていたジロちゃんの上で馬乗りになった。
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わらびもち