手のひらに 

「やめようと思ったキッカケは亮の激ダサではないよ。だから、亮のためではない。」

「じゃあ誰!?誰のためにやめるなんて言うの!?」

「誰のためって…」

「いいよ!?他のキスフレとは別れてくれていいよ全然!そうすればいい!でもっ、でも俺は、やだよ…」


うるうるとした瞳で上目遣いをするジロちゃんにときめいた。
さっきまで泣いていたのは私なのに立場逆転か。

これはもしかしなくても彼女、居ないのでは。
ずっと彼女が居る前提で物事が進んでいたが、そもそも彼女が居るというのは私の勝手な臆測。いや妄想。

でも、それでも確信は持てない。ジロちゃんの口から聞き出さなくては。


「キスしたいなら他の人で良いと思う…」

「なんでそうなんの!?俺は名前としたいんだよ!?」

「…どういう意味?」


バクバク脈打つ胸を抑えつけながら伺うと、ジロちゃんは珍しくも口籠っている様子だった。

一体なんて答えようとしているから口籠ってるんだい。私とのキスの相性がいいからやめたくないだけなのか、それとも、

それとも、ジロちゃんも私と同じ気持ちだったりするのか。

心臓が口から飛び出そうなほどドキドキしながら返事を待っていると、再びジロちゃんに抱きしめられた。
今度は首に腕を回す形で、顔を埋めるようにして。


「ずっと名前とキスしてたいの…」


こんなにもか細くて可愛らしい声初めて聞いたな…というかそれ理由になってない、さっきとほぼ同じ。

何故ジロちゃんは私とキスしたいのかを、具体的に聞きたいんだ。私が一番知りたいのはそれだけ。


「私以外の人ではダメって事?」

「うん、名前だけでいい。」

「でもジロちゃんなら他にも作れると思うよ、キスフレとか、なんなら彼女でも。」

「そんなのいらない!名前がいいんだ、俺は!」


かまをかけてみたところ、どうやらジロちゃんにそれらしき人は居なかったようだ。
いらないって事は、彼女やキスフレは居ないという事、のはず。

ジロちゃんは私とどうなりたいんだろうか。
キスだけの関係でいいのか、それ以上になりたいと思ってくれているのか。


「ジロちゃんは、私とキスさえできればそれでいいんだね。」


非常にタチの悪いことを言うと、ジロちゃんは再び口籠っていた。

こんな風にオドオドしてるジロちゃんを見るのは新鮮だ。いつものほほんとしてるけど、テンションの高い時は呆れるくらい元気いっぱいなのに…なんて愛しい…

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わらびもち

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