てんとうむし
窓の外を見るのをやめた仁王は、どこか別の場所に向かって声をかけていた。
てっきり俺に向かって言ってるのかと思ったけど、てか誰がねちっこい男だよ!
元はと言えばお前がだな!
そう思いながら仁王の視線の先を見ると、いつの間にかクラスメイトの女子が突っ立ってた。
えっと、こいつ、名前なんだっけな………
苗字だっけ。
文句言ってる最中に視界の端になんか居るな〜と思ってたけど、苗字だったのか?
「あ……えっと」
「机、移動させてかまわんよ。」
苗字は申し訳なさそうな顔で頷くと、そそくさに俺と仁王の間に机を移動させた。
そっかこいつ、俺の後ろの席になったやつか!
通りで仁王との間に妙な空間があるな〜と思ったぜ。
てかなんですぐ机移動させなかったんだ?
結構前から視界の端でチラついてた気がすんだけど。
もしかして俺が仁王と話ししてたから遠慮してたのか?
そんな事気にしなくていいのに、控えめなやつ……
でもそれで待たせてたんなら、謝らねぇとな。
席に座りながら、机を窓際にくっつけていた苗字に声をかけた。
「悪い、ずっと待ってたのか?」
「えっ……いえ、そんな事ないです」
「ほんと?ならいいんだけどさ、なんで敬語?」
「あ…なんとなく」
「何だそりゃ。同い年なんだから、タメでいこうぜ。な?」
「うん…ごめん…」
ん?今のって謝るところか?
うんわかった!つっとけば済む話だろい。
てかさっきからなんでこんな申し訳なさそうな顔すんだ、こいつは。
妙にテンションの低いやつが後ろの席になったな〜とか思いながら、俺は笑顔で言った。
「ま、こうして席も近くなった事だしさ。仲良くしようぜ」
「え…?あ……う、うん」
「これからシクヨロ、苗字!」
正直絡みにくそうなやつだとは思ったけど、中学最後の1年間、クラスメイトとは全員と仲良くしたいからな!
多分今は人見知りしてるだけだろうし、それにそういうやつほど仲良くなってみせる!って俄然燃える。
フレンドシップ全開の俺を驚いた顔で見つめてから、苗字は柔らかくにこっと笑った。
「こちらこそよろしくお願いします。」
「だから、敬語!」
「ご、ごめん…」
このクラスになってから苗字とは初対面で、直接話したことなんてなかったし、声もあまり聞いたことがなかった。
最後に声聞いたの、最初の自己紹介の時くらいじゃね?
ってくらい聞いた事ねぇ。
特に目立った所もなく、いっつも特定の友達と一緒に居るごくごく普通のクラスメイトだな。
でもなんとなく影が薄いっていうのかな〜。
名前もすぐ思い出せなかったくらいだし、苗字自身がおとなしすぎるっていうか。
前髪も目にかかってて、ちょっと暗い印象だし
だからさっき笑った時はちょっとびびった。
ちゃんと笑えるんだな〜って、当たり前の事だけど。
「てか仁王のやつ酷いんだぜ、いつの間にか俺のくじと取っ替えてやんの!」
「そうなの…?」
「そう!本来なら俺が一番後ろなのによー。なあ、仁王。」
「まだその話しちょるんか」
「いや、俺は一生根に持つかんな。一番端の後ろほど当たりくじねぇんだからよ。」
「なんて綺麗なBluest skyじゃ」
「またそれか!どんだけ窓の外お気に入りなんだよ!」
腹立つくらいキリッとした顔で空を見上げていた仁王に向かって声を上げると、苗字は苦笑いしてた。
ほんと、おとなしいやつだな〜
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わらびもち