てんとうむし
「仁王と話してる時、お前に話振ってたりしてただろ?なんていうか、そういうの迷惑なのかと思ってさ。」
「あ……ご、ごめんなさい…」
「やっぱ迷惑だった?」
「あの……その…」
苗字はおどおどした様子で深く俯いた。
もし俺と話すのがいやなら、その時点でいろいろアウトだろ。
話振られても確実に迷惑って事じゃん。
間に挟んで話したり、話振られたりするのが嫌なら、そういうのはキッパリやめる。
苗字と仲良くなる機会はなくなるだろうけど、仕方ない。
人見知りなやつほど仲良くしたいって思ってたけど、すでに嫌われてちゃあな…
これからは前の席の田中と横の橋本と喋るか〜なんて思ってると、苗字がめちゃくちゃにちっちゃい声で呟いた。
「あんまり男の人と喋ったことなくて…」
「え?」
「あ……私、人見知りしてしまって…だから迷惑とかそんなんじゃなく」
「男と喋った事ないの?」
「のあっ……聞こえてた…!」
苗字の顔がみるみるうちに赤くなった。
そっか、人見知り+あんま男と喋ったことがないからあんな感じだったのか。
てことは俺の事嫌いとかそういうんじゃなかったんじゃん!
なんだよ〜それ聞いて気分晴れたぜ!
一気に安堵した俺は、笑顔になって苗字の机に身を乗り出した。
「それなら、俺で慣れれば問題ねぇじゃん!」
「えっ…でも、え?あの」
「迷惑とかじゃないんだろ?」
「それは、もちろん…」
「じゃ、これから声かけていいか?仁王が居ない時も。」
「そんな…気を遣う事ないのに…」
「話すだけなんだから、どうって事ないって。それに、ある程度男に慣れてなきゃ彼氏できねぇぞ?」
「…余計なお世話です」
「おっ、謝る以外にも反応できるんじゃん!」
「えっ…そっ!そんな事言わないでよ」
「でも事実だろい?」
「ええ…?そんな頻繁に謝ってるかな…」
「息するように謝ってるぜ、お前」
「そっか…丸井くんの中で私はひたすら謝るだけの人で定着してたんだね…」
「ふっ…ははっ!そうそう、こういう感じで普通に会話してこうぜ!」
「あ……う、うん。わかった!」
いつもの控えめな苗字から、ちょっとだけ意気込んだ返事が聞けた。
これだけでも前進だな!なんか俺も嬉しく思うぜ!
ま、男に慣れるってんなら席の近い俺くらいしか適役いないだろい!
一応苗字の後ろにも男は居るけど、あいつサボるか寝てるかだから全く頼りになんねぇんだわ。
苗字は申し訳なさそうに、でもちょっと嬉しそうに笑いながらペコっと頭を下げた。
「丸井くん、なんか、ありがとう…」
「別にいいって。俺で慣れちまえば他の男なんて屁でもねぇからな、保証するぜ!」
「うん…丸井くんってちょっと自信過剰…」
「え?なに?」
「な、なんでも…」
「いや聞こえてたからな?」
「じゃあ聞き返さないでほしい…!」
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わらびもち