不幸中の幸いの幸い
「じゃあ…今日は家に帰ります」
「そうしとけ」
跡部さんの優しすぎる声色に鼻がツーンと痛くなったが、唇をきつく噛みしめ、なんとか涙をこらえた。
これ以上泣いたら明日顔パンパンなっちゃうからやめてくれもう!
ジャージに脚を通し、お世話になったタオルを畳んで、閉め切っていたカーテンを全開にした。
「すみません、待たせてしまって…えっと、このタオルは」
「洗ってから返せ。いいな?」
「あ、はい!洗ってから返します!」
びっくりした。あの人の時みたいに返さなくてもいいって言われると思ったから。
でも普通に考えたら借りた物はちゃんと返すべきだよね。何考えてんだ!
今日洗濯して明日にでも返そうと考えていると、樺地君からカバンを差し出された。
今気が付いたけど、樺地君は2年生、つまり私と同い年みたいだ。
ブレザーには2年ピンバッチがついてる。
「本当にありがとう樺地君!体操着に荷物まで取りに行ってくれて!私の席、よくわかったね!」
「…鳳さんに、教えてもらいました」
「え、鳳くん?」
「鳳か…そういえばC組だったな。手間が省けて良かったじゃねーの」
「ウス」
なんと3人は知り合いだったらしい。
鳳君とは席が近いからって言うのもあるし、知り合いだったならそれなりに手間も省けたのか…あっそういえば、お弁当!城之内さんと教室を出たっきりほったらかしにしてたんだった!
急いでカバンの中を確認すると、布に包まれたお弁当箱を発見した。これたぶん友達だ。なかなか帰ってこないのを見兼ねてなおしといてくれたんだろう。流石は私のマブども。
明日学校に行ったら友達と鳳君にお礼言っとかなきゃ………というか。
「ところで私、クラス教えてましたっけ?」
「アーン?クラスくらい知ってるに決まってんだろ。なぁ、苗字名前よ。」
「えっ、え?名前…なんで…」
「俺様はこの氷帝学園のキングだぜ?知ってて当然だ、なぁ樺地?」
「ウス」
うおー!この学校のキングを名乗ってるだけの事あるー!!
跡部さんの有能すぎる記憶力に感動しながら、樺地君から受け取ったカバンを肩にかけた。
今日は本当にお世話になったな。わざわざ保健室まで連れてってくれたし、荷物まで取りに行ってくれて。
それになにより、あの先輩と関係を切るきっかけを作ってくれた。
もう、感謝しかないよ。
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わらびもち