不幸中の幸いの幸い
濡れた制服が入った袋を手に下げ、帰る準備満タンな私は跡部さんたちに深々と頭を下げた。
「今日はほんっとうに、ありがとうございました!」
「ああ。帰る支度ができたなら行くぞ。」
「いえ、跡部さん達は授業に戻ってください!もう予鈴鳴る頃じゃ…」
キーンコーンカーンコーン
おー!言った側から予鈴が鳴り始めた!
予鈴が鳴ったことにちょっと喜びながら、私は2人に教室に行くよう急かした。
「ほらほら!早く行かないと授業に遅れますよ!」
「言ったろ、お前の家に行くって。俺様の車で送ってやる。」
「くっ!車…!?でも、授業、あるじゃ」
「アーン?俺からしたら授業は復習程度にすぎねぇよ。心配するな。」
「いえ、でもやっぱり、これ以上迷惑をかけるわけには」
「もう迎えの車が来ているはずだ。今断った方が、よっぽど迷惑だと思うが?」
「そんな…!親切だけど悪どい!」
「言っとけ。樺地、お前は授業に戻れ。すぐに戻る」
「ウス」
跡部さんの言葉に素直に頷いた樺地君は、丁寧に一礼してから保健室を出て行った。
樺地君、本当に良い人だった…同じ学年だし、また会う事があったら声かけよう!なにかお礼しなくちゃ!
うーん、どんなお礼がいいかな…お菓子あげるとか、ランチご馳走するとか?
って当たり前のように食べ物系になっちゃってるけど、でも、消費系ものの方がいいよね?
もんもんとお礼を考えていたら、樺地君が出て行ったドアを見つめたままの跡部さんが言った。
「保健室を出る前に聞いておきたいんだが」
「はい?なんですか?」
「…化粧」
「えっ化粧がどうかしましたか?」
「水をかけちまった時にほとんど流れただろ。し直さなくていいのか?」
ばつの悪そうな顔をした跡部さんが、少し言いにくそうに聞いてきた。
あ〜化粧が崩れ落ちた時のあの悲惨な顔、見られちゃってたもんな〜!
でも水がかかる前に涙で崩れてたから、化粧の件は跡部さんのせいじゃない。
だから、跡部さんがそんな顔する必要なんてない。
「化粧し直すの、60分はかかりますけど」
「なんだと?つまり1時間か…随分と長時間かけてるんだな。」
「嘘です、本当は30分程度です!」
「いや…30分でも長いぞ。」
「えっ……?あいやでも!今は化粧できる道具持ち合わせてないので、大丈夫です!ありがとうございます!」
「…そうか」
私が笑顔で言うと、跡部さんはほっとしたように笑った。気遣ってくれてるなぁ…
化粧は、あの人に言われてやっていただけだし、あの人と別れた今、化粧をする理由はほとんどなくなってしまった。
なんて、化粧経験できてなんだかんだ良かったけどね!先輩のおかげで毎日してたから、めっちゃ化粧上手くなったもん!その点は先輩に感謝かな!
将来役に立つし、友達にも教えられるし、なにより可愛くなれるし!
友達が言ってた。化粧してる時、すごく楽しいんだって。好きな人の前では可愛くいたいって、思うから。
私の化粧はそれとはちょっと違ったけど、いつか、私もそう思えるようになれればいいなって思う。
まぁまぁ、今はありのままで十分だよ!これで朝はギリギリまで眠れるぜ!
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わらびもち