不幸中の幸いの幸い 

しばらくして、車は家の近所の広い道の端に停車した。

うちの家へ行く前に狭い道があるから、通れないことを配慮してここに停めたみたいだ。跡部さんとこの車は特に大きいからね!

停車している車が一度揺れて、後部座席の扉が開いた。どうやらミカエルさんが車を降りて、扉を開けてくれたらしい。

こういうの映画でしか見たことないから、すごく貴重な体験だぞ!


「降りるぞ」

「はい!」


あっ、まって、これは。

私に合わせて後部座席の隅っこの方に座ってたものだから、跡部さん、めっちゃお尻を引きずりながら扉へと向かってらっしゃる!
リムジンだから無駄に扉から距離あるし、なんかもう、悪いことしちゃったな!

お尻を引きずって扉へ向かう跡部さんの姿に半笑いになりながら、私もその後に続いた。


「よいしょっと…」

「苗字様、お手をどうぞ。」

「えっ?」


跡部さんが車から降りて、その次に私が…って時に、ミカエルさんに手を差しだされた。

これは…もしかしてエスコートってやつ?嘘…そんな極上のおもてなしを私なんかに…?これっ、え…でも、いやいや…!いやいやいや!

ミカエルさんの手と顔を交互に見て困惑していると、外にいた跡部さんが少々怒り気味に言った。


「何もたもたしてやがる。さっさと降りてこい。」

「でも私、手が汚いし…」

「なんだそれ。ったく、世話の焼けるやつだな。」

「え……あっ。」


呆れ顔の跡部さんがこちらにやってかと思うと、ウロウロしていた私の手を掴んだ。
掴まれた手は、そのままミカエルさんの手のひらへ誘導。

めっちゃ介護してくれるじゃん、跡部さん……。


「ほら、早くしろ。」

「えっ、え……はい…!すみません、ありがとうございます!」

「いえいえ、お気になさらずに。」


にこりと優しく微笑んだミカエルさんに、心があったかくなった。

跡部さんが頼んだとは言え、わざわざ私の事を送ってくれて、ドアまで開けてくれて、手までとってくれて…こんなに執事執事してる人いないよ。

ミカエルさんの手を借りて、車から地面に足をついた。


「では苗字様、私はこれにて失礼致します。」

「はい…!送っていただいて、本当にありがとうございました!」


ぺこぺこお辞儀する私に向かって微笑んだミカエルさんは、一礼して車へと戻っていった。

かあっこいい……!執事の人ってなんでこんなに魅力的にかっこいいんだろう!

ミカエルさんの丁寧すぎる対応に素敵な気持ちになっていたら、跡部さんがリムジンのドアを閉めた。


「跡部さん、ドア…あれっ?」


ドアを閉めたかと思えば、跡部さんはどこかに向かって歩き出した。


「あの、跡部さん?どこ行くんですかー!」


私が急いで呼び止めようとするも、跡部さんは立ち止まる事なく、振り返らずに言った。


「お前の家に決まってるだろーが。」

「え!?でも!ここから近いですし!」

「いいから、家まで送ってく。」


跡部さん……暗くて人通りのない夜道でもないのに、とことん優しい人だな。でも。

スタスタと歩いて行く跡部さんの背中に向かって、声をかけた。


「家、こっちです!」


私がそう言うと、跡部さんはくるりとターンしてこちらに戻ってきた。


「お前が先導すべきだったなぁ?アーン?」

「えっ、跡部さんが先に行ったのに!?」

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わらびもち

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