不幸中の幸いの幸い 

ちょっと窓の外見てた間にそんな、たぶん車の走る音で気付かなかったんだろうけども。
急に距離縮まってるとびっくりするな。なんか、瞬間移動みたいになってて笑う。

私がうろたえていると、隣の跡部さんはなにやら不服そうな顔で言った。


「お前、生まれて初めてのリムジンなんだろ?もっと堪能しやがれって言ってるんだ、俺は。」

「あの…でも私なりに堪能させてもらってますよ?」

「ならいいが、俺様を遠ざけてたって訳じゃねーんだな?」

「遠ざけてた…とは?」

「必要以上に距離開けて座ってただろが。パーソナルスペース遠すぎだぞ貴様。」

「いえ、これはその、自然にそうなったんです!私、隅っこが好きなので。」

「そうなのか?」

「はい、落ち着くんです。ほら落ち着きません?」

「……俺は逆に落ち着かねぇな。強いて利点を言うなら背後を取られずに済む、ってところか。」


跡部さんは言葉の通り落ち着かない様子で足組みしながら、笑止!って感じに笑った。

さっき言ったこと気にしてここまで来てくれたんだろうな、跡部さん。
またまた気を遣わせちゃったよ。背後の件は、御曹司である跡部さんが言うとあまり笑えないが。

でも、氷帝学園のキング!ってイメージしかなかったものだから、こうやって跡部さんの意外な一面が見れてなんだかお得だ!

こんな風に跡部さんと話できる機会なんて、これから先ない、絶対。
あ…もちろんタオルとお返しはするけど、流石にそれっきりになるだろうし。

だから今日という1日は、奇跡に近い1日だ!


「……それで、あの、跡部さん?」

「なんだ」

「さっき座ってたところに戻らないんですか?」

「俺様がここに居ちゃ不満か?」

「そうじゃなくて、ここ隅っこだし、落ち着かないのでは?」

「たまには悪くねぇ」


ふんっと鼻で笑った跡部さんは、腕組みしながら目を閉じていた。

跡部さんが隅っこの方に居座るって新鮮だな。でもちょっと距離が近いというか、近っ。逆に跡部さんは近すぎるね、パーソナルスペース。

窓から外に目をやると、いつの間にか見慣れた通学路の風景が流れていた。

もうそんなに時間経ったんだ…早いなぁ。リムジンなんてそう乗れるものじゃないから、もっと乗ってたかったかも。

私に道を聞かずとも運転手の執事、ミカエルさんは家への行き方を知っていた。
各生徒の住所までわかっちゃうなんて、生徒会長ってすごいや。

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わらびもち

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