お礼編
「ごめんね、どこで会うかの約束するの忘れちゃってて…」
昼休み時間のこと。
洗濯したタオルを持って来たのはいいが跡部さんがどこにいるかわからず彷徨っていたところ、運良く、廊下で樺地くんと遭遇した。
タオル返さなきゃなのに、どこで会うか約束しないなんてね…致命的ミスだぞ。樺地くんに会えてラッキーだ!
「あの、実は樺地くんに昨日のお礼したくて!はい!」
「…私に、ですか?」
「うん!つまらないものですが、受け取ってもらえる…?」
「とても嬉しいです。ありがとう、ございます。」
紙袋に入ったおにぎりせんべい(箱)を手渡すと、樺地くんはいつもの無表情のまま、ペコリと頭を下げてくれた。
無表情だけど、なんとなく表情が柔らかくなった気もする。わずかでも喜んでくれたなら、嬉しいな。
それにこのおにぎりせんべい、私一押しのおやつなんよね!
関西では定番だけど、関東ではあまり売られてないから手に入りにくい。
だから関西に住んでるイトコに大量に送ってもらうので、ストックは十分にある!
これを機に樺地くんもおにぎりせんべいの美味しさにハマってくれると嬉しいなぁ!
…………
しばらく歩いて、やって来たのは一階。
跡部さんは生徒会室で仕事をしているらしい。
「お仕事中なのに、行っていいのかな?やっぱり、樺地くんから渡してくれた方が」
「大丈夫…ですので、苗字さんから、お願いします。」
「あ……わかった。」
昨日は元気な姿を見せるだけでいいって言われたけど、それってなんていうか、恥ずかしいこと、じゃないか。
それに先輩との事情もそれなりに知られてしまっているし、気まずいというか。
正直、樺地君にこのタオルと申し訳程度のお礼、おにぎりせんべい(箱)を押し付けて逃げたい。
でも昨日は樺地君に体操着やら頼りっきりだったし、そういう訳にもいかない。でも跡部さんに会いたくない……でも、でもなぁ!
恥ずかしさと気まずさで足取りが重くなる中、とうとう生徒会室前にたどり着いてしまった。
ドアをノックした樺地君が生徒会室に入っていったので、私はその大きな背中に隠れながら後に続いた。
「ご苦労だったな、樺地。」
「ウス」
「おい苗字、いつまでも樺地に隠れてないで出てきたらどうだ。」
「えっ」
なんでだ、何故私が樺地くんの後ろにいるとわかった…?樺地くんおっきいから、見えないかなって思ったのに。何かはみ出てたとか?
跡部さんに私の存在がバレていることに戸惑いながら、出ようか出まいかまよっていると、跡部さんが静かに言った。
「樺地、横にずれろ」
「ウス」
なに!?くっ、そうはさせないぞ!
横に一歩ずれた樺地くんと一緒に、私も一歩横にずれると、跡部さんが呆れた声で言った。
「お前まで一緒にずれるんじゃねぇ、何がしたいんだ?」
「ここが、落ち着くと言いますか…」
「樺地、前に出せ」
「ウス」
「え……うわっ!」
今度は横にずれるとかではなく、くるりと巧みに回って後ろにいた私を跡部さんの前に突き出した。
どんでん返しかて!!
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わらびもち