前の席の鳳くん編
朝練の後、教室へ入って最初に目に付いたのは苗字さんの姿だった。
昨日は早退しちゃったみたいだけど、大丈夫だったのかな。
「あっ!おはよう!」
教室に入ってきた俺を見つけたらしい苗字さんは、笑顔で挨拶をしにきてくれた。
良かった、思ったより元気そうで。昨日はどこかしょんぼりしていたから。
でも、変だな?いつもと雰囲気が違って見えるのは、なんでだろう。
「昨日はありがとう!」
「え?」
「荷物のこと!樺地君に教えてくれたんだよね」
「ああ、昨日の…でも荷物をまとめてくれたのは苗字さんの友達だから」
「うん、友達から聞いた!それもこれも鳳くんが友達に言ってくれたおかげだよ。本当に助かりました、ありがとう!」
「そんな、大したことしてないよ。それより昨日は大丈夫だった?」
確か苗字さんが早退したのは、お昼休み頃。
その間に、苗字さんが隣のクラスの子に呼び出されているところを目撃していた。
もしかしたら、それが問題で何かあったんじゃ
だいぶ踏み込んだこと聞いちゃったかなって聞いた後に後悔したけど、彼女は困った顔をするわけでもなく、むしろ笑顔になって答えた。
「大丈夫!むしろスッキリしたんで!」
「そうなの?良かった…ね…?」
「うん!」
苗字さん、なんだか調子いいみたい…?
一体何があったんだろう。
流石にこれ以上は踏み込めないので、俺はもう一つ気になってなっていた事を尋ねてみることにした。
「それにしても苗字さん、樺地と知り合いだったんだね」
「あっ、そ……そうなのかな…?へ、へへ…」
苗字さんは目を泳がせながら、少しだけ顔を赤くした。
さっきまでの笑顔はどうしたのってくらい急変しちゃった。まさか、こっちの方が聞かない方が良かったの!?
でも、樺地と苗字さんがどういう関係なのかはだいぶ気になるんだよな。
樺地はあまり喋らないし、一体どういう経緯で苗字さんと知り合いに?1年の時にクラスが一緒だったとか?
ぎこちない笑顔の苗字さんをじっと見て考え込んでいると、あることに気付いた。
苗字さん……今日、化粧してない?
そうか、いつもと雰囲気が違う風にみえたのはこれか!
「どうして急に」
「えっ?」
「う、ううん!なんでも…」
「あ。もしかして、私の顔?」
「へっ!?あ、いや…」
「今日は日焼け止めだけで、他は化粧してないんだよ。してないと別人だったりする?」
「そんな!全然!そっちの方がいいよ!俺は今の苗字さんのほうがすごく、すっ」
言いかけたところで口をつぐんだ。
俺は今、何を言いかけて。
化粧してた頃の苗字さんも可愛かったけど、だけど今の苗字さんの方が自然で可愛くて、綺麗で、俺はすごく、すっ
「どうしたの?」
「え!?えっと、つまりその……そっちの方が苗字さんらしいなぁって!」
「悪口…?」
「まさか!」
「はは、冗談だよ!私らしいって言ってくれてありがとう、嬉しいよ!」
苗字さんの笑顔に心臓が飛び跳ねた。
女の子の素顔を見てときめくって、俺の感覚はおかしいんだろうか?
教えて下さい、宍戸さん…!!
前の席の鳳くん編 end.
-12-
*しおり *もくじ
ページを飛ばす(12/19)
わらびもち