お礼編
午前中はずっとタオルの事が気がかりで、長いお昼休みを使って返しに行けたらなと思って、4時限目後すぐに教室を出た。
だから、お昼ご飯はまだ食べていない。
「今から、食べようかと。」
「なら丁度いい。俺も仕事に一区切りついたところだからな、食事に付き合ってもらうぜ。」
「なんで!?」
「アーン?俺様と食事するのが嫌だってか?」
「そういうわけじゃなくて、でも」
「別に強制じゃねぇからな。」
跡部さんにしては珍しく、ちょっとだけ弱々しい声だった。
そんな風に言われると、断れない。
「あの…じゃあ、ご一緒させていただきます。跡部さんがよければ…」
「良いからそう言ってんだろ?」
「そうですよね、すみません。へへ…」
へらへらと笑ってみせたら、跡部さんが鋭い目つきで私を見た。
「お前、無理してんじゃねぇだろうな?」
「えっ」
急にそう言われて私がポカンと見返すと、跡部さんは力強く、でも優しい声で言った。
「お前は押しに弱すぎる。ああして欲しいこうして欲しいって言われてはいはい頷いてたら、また同じことの繰り返しだってお前もわかってんだろ?」
「……」
「嫌なもんは嫌でいいんだよ。ちゃんと尊重してやれ、自分の意志をな。」
跡部さんは真剣な面持ちで、真っ直ぐと私の目を見て言った。
先輩との事で、言ってくれてるんだ、跡部さん。
そうだそうだ、こうやって断る事ができないからいけないんだよ私は!
ちゃんと自分の意志を持っていれば、あんな事にならずに済んだろうし!
ずっと、自分のことに気を回すのを忘れてた。
これからは、嫌なものは嫌って断れる、そんな強い精神を身につけていかないと!
……
………ん?でも、まって。
別に嫌なんかじゃない、跡部さんと一緒にお昼ご飯食べるのは。
嫌じゃないのに、断る理由あるか…?
「お昼ご飯、ご一緒したいです。」
「おい、話聞いてたのか?もっと自分の意志を持てっつって」
「跡部さんと一緒にご飯、食べたいんです。これはちゃんと、私の意志ですので!」
「…そうなのか?」
「はい!あ……もしかして私が断れるように言ってくださっただけでしたか?すみません、それでしたら私はこれで」
「んな訳ねぇだろ。俺様からの誘いを断ろうなんざ1億年早いぜ?」
「んなっ、1億年も…!?」
それになにより、跡部さんは私の恩人だからね!
ここは普通に断っちゃだめなところだ!
「私お弁当なんですが、跡部さんは」
「ここで食べるつもりだ。」
「わかりました!じゃあ私、お弁当とってき」
「持って来ています。」
「おう、早かったな樺地。」
「ウス」
生徒会室ドア付近に立っていた樺地君の手には、私のお弁当箱が。
一体いつの間に!ていうか持ってくるの早ええぇ!!
「一緒に食べる気満々じゃないですか!別に強制じゃねぇからな…とか言っちゃってたのに!」
「お前…俺様の真似うまいじゃねーの。」
「話を逸らさないでください!全然似せてないし!」
「結果的に持ってくる手間が省けて良かっただろーが。」
「そうですけど!でも樺地君に行かせないでください!樺地君も素直に行かなくていいんだよ!」
「樺地は俺様に忠実なだけだ。なぁ、樺地?」
「ウス」
だからウス。じゃねーーー!!!
お礼編 end.
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わらびもち