てんとうむし 

──ぱちっと目が覚めた。
あ〜すっげぇうたた寝してたな〜俺。

なんか、いろんな夢見てた気がする。
でも内容はいまいち覚えてないんだよな。
でも、なんとなく、苗字が出てた気が……

机の上に置いてあった携帯の画面を見たら、寝落ちしてからそんなに時間は経ってなかった。

じゃあ、もうちょっと寝ててもいいか。

二度寝しようと思った矢先、背中をつつかれた。
これ…もしかしなくても、苗字?
そりゃそうだろ、俺の後ろの席は苗字なんだから。

伏せていた顔を上げて振り返ると、苗字がにこっと微笑んだ。


「ごめんね…寝てた?」

「ん、いや…ちょっとうとうとしてただけ」

「うん…この時間帯はお昼寝したくなっちゃうよね。今日みたいに晴れてると特に…だからここまで来たのかな?」


苗字は窓の外の空を眩しそうに見上げた後、俺の右肩あたりを見て柔らかく笑った。

ここまで来たのかな…って、何が?

言ってる意味がわかんなくて首を傾げてたら、苗字が俺の右肩を指差した。


「テントウムシ、とまってる」

「はっ?てんと…おおうっ!?」


自分の肩に目をやった瞬間、赤と黒のテントウムシが視界に映った。

やべぇ、眠気一瞬で吹っ飛んだわ。

思わず情けない声を上げてそのまま硬直していると、苗字はくすくすと笑った。


「あれ?丸井君…今怖がって」

「ビビってねーよ!ビビってねぇけど…でも、これ、どうすりゃ」

「まって、丸井君」


肩のテントウムシを手で払おうとしたら、苗字に止められた。

今にも死にそうな顔で苗字の顔を見返したら、彼女は困り顔に笑みをこぼしながら椅子から腰を浮かせた。


「とってあげるから…じっとしててね」


そう言って、俺の肩に手を伸ばした。

苗字が、近い。
いや、そんなスグそこ!って訳じゃねぇけど
これは近いだろ、十分近ぇよ。
心なしかいい匂いするし…なんか、花みたいな…

心臓の音がドクドク耳に、頭に響いてくる。
肩にはテントウムシとまってるし、苗字の顔は近いし、なんだよこの状況。

混乱状態の俺に構わず、苗字は俺の肩にくっついてたテントウムシを指ですくい上げた。


「っしょ……とれた!この子、窓から入ってきたんだね。」


苗字は腰を落として、指にとまったテントウムシを見て微笑んだ。

なんか、記憶がふわふわして、曖昧だ。
ついさっきの出来事なのに、どっちが原因でこんなドキドキしてたのかよくわかんねぇ。
まだ寝ぼけてんのか、俺。

でも、苗字にドキドキするってそれ…変じゃん…
やっぱ、テントウムシのせいだよな?

まだまだバクバクする胸を落ち着かせるため、俺は息を大きく吸って、吐いた。


「苗字お前…よく触れるな?」

「うん?だって…この子、可愛いと思わない?」

「ええ…?」

「ほら、こう、頑張って指伝ってる姿とか…ふふっ」


指の上のテントウムシを見つめてた苗字が、幸せそうに笑った。

まぁ、そうだな…確かに可愛いわ。
テントウムシに夢中になってる苗字がな。

だから、これは普通に、無邪気で可愛いな〜って思っただけだから。
子どもが虫捕まえて喜んでるとこ見る、親の感覚?

だから、特に深い意味はないっつーか

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わらびもち

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