てんとうむし 

指を伝っていくテントウムシ越しに苗字を見てたら、苗字が人差し指を立てて言った。


「見ててね、今から飛び立ってくから!」

「お、おう?」


苗字に言われた通り、テントウムシに目をやった。
立てられた人差し指のてっぺんを目指し始めたてんとう虫。

そいつが指先に到着すると、そのまま羽を広げて窓の外へ飛び立って行った。


「すげっ、ほんとに飛び立った!」

「テントウムシはね、枝とかの先端に立って行き場がなくなると上に飛び立つ習性があるから」

「へえ?詳しいな、昆虫博士じゃん」

「たまたまテレビで見て知っただけだよ…」

「でもすげぇよ?触れるってだけでも大したもんなのに。女子なら普通怖がるだろ」

「私は…可愛いなって思うから。」


苗字は照れ臭そうに笑った。

こりゃ苗字の意外な一面、見れたわ。
苗字のことだから虫とか怖がりそうって勝手に思ってたけど、全然そんな事ないんだな。

逆に怖がってるのは俺っていう。


「丸井君はやっぱり苦手?」

「やっぱりって言うな!…あんま得意分野ではないけど。」

「ふふ…でもね、てんとうむしが身体にとまると、幸せがやってくるんだよ。」

「あ〜!なんか聞いた事ある、それ。」

「ね、つまり丸井君はすっごくラッキーってことだよ!」

「え〜、虫にくっつかれても嬉しくねぇんだけど…」

「そうだね…さっきすごく怖がってたもんね」


俺がげんなりした顔を見せると、苗字は楽しそうに笑った。

ったく、そんなにおかしいのかよ?
俺がテントウムシで動転してた姿が。

くすくす笑いっぱなしの苗字を睨みつけてたら、彼女は笑いを落ち着かせるために深呼吸をした。


「丸井君、虫とか平気かなって思ってたから…ごめんね」

「誰しも苦手なもんはあるんだから、仕方ねぇだろ〜」

「じゃあ…虫が苦手な丸井君のために、夏が来たら蝉の抜け殻プレゼントするね」

「ちょ、じゃあの意味わかんねぇ!」

「蝉の抜け殻で慣れてもらえればと思って」

「いや、いいって!いらないからな!いらないっ!」


全力で拒否ったら、苗字はまた楽しげに笑ってた。

苗字がこんな意地悪言うとか珍しいな…
まぁ、あの席替えから1ヶ月くらいは経ったからな。
馴染んでくれたって事か。

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わらびもち

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