てんとうむし
「じゃあ席移動させんのラクだな、後ろに下がるだけだし!」
「確かに、そうだね」
なんとなく、そんな予感はしてた。
端っこと端っこの一番後ろじゃ、程遠いよな。
別に席が遠くなったからって、苗字と話せないわけじゃないんだけど。
わざわざ苗字のところに出向くって言うのも、なぁ…
「丸井くんは、どこの席になったの?」
「俺?俺はな…あっちの端っこ」
「そう…」
「26」の席を指し示すと、苗字はやたらと薄い反応を見せた。
その反応、あんま嬉しそうに見えねぇんだけど。
それとも俺がどこの席になろうが興味ないねって反応?
「ちょっと遠いけど、一番後ろってのは一緒だしな!」
「うん…」
「あー、ほら。ドアから近いじゃん俺の席。だから教室出入りする時にでも」
「何を言うとるんじゃ、そこは俺の席ぜよ」
「……は?」
なんかこれ、えらくデジャヴだな。
前もそんな事言って、俺のくじとすり替えて…
まさかと思い、俺は自分の持っていたくじを開いた。
そこには「26」ではなく「10」と書かれている。
いつの間にすり替えたんだよって素朴な疑問よりもまず、この「10」の番号がどの席に書かれているのかが知りたくて
俺は黒板の中の「10」を探した。
「あ……」
「10」の数字を見つけたのは、元、苗字の席。
「お前…」
「ピヨ」
ったく本当に。
一番後ろがいいからって、また俺のとすり替えたのかよ…
「やってくれるじゃん」
「はて、何の事かのう」
仁王はとぼけた顔を見せると、自分の机を移動し始めた。
じゃあ俺も、席移動させるかな。
自分の席に戻ってく俺を、苗字は不思議そうな顔になって言った。
「丸井くん、今のはどういう…」
「いーから!元仁王の席だろ?早く机移動させろい!」
「う、うん」
苗字が机を後ろに下げていくのと一緒に、自分の机も後ろに引きずった。
一個後ろに移動するだけだから、マジでラクだな!
俺が元苗字の席、苗字が元仁王の席で落ち着くと、苗字は驚いた顔で俺を見た。
「あっちの端っこなんじゃ…?」
「あれは仁王の席!俺の席はここ!」
「えっ…!」
そう言うと、苗字の顔がパッと明るくなった。
へえ?さっきまで落ち込んでた気がするんだけど、気のせいかな〜
「でもさっき」
「細かい事は気にすんな!また俺が前の席で良かっただろ?」
「うん…丸井くんが前に居てくれると、安心するよ。」
「ま、まぁ。俺でだいぶ男に慣れたもんな?てか俺くらいだろ、こんなに慣れてる男は!」
「うん?私は丸井くんが前に居てくれるおかげで先生から隠れてねりけし作れるって言いたかったんだけど…」
「おい誰がデブだよ。」
俺そんな太ってねぇし先生の死角になるくらい幅も広くねぇよ。
ていうかわざわざ隠れてやる事が可愛らしいな。
こちとら大胆にお菓子食っちゃってるっての。
俺もねりけし作って苗字にあげようとか思ってたら、苗字が微笑んだ。
「丸井くん、これからもシクヨロです」
「おう。シクヨロ!」
席替えする事になって怒って落ち込んで現実逃避して諦めてって、いろいろ忙しかったけど。
たまたま仁王のくじが苗字の前の席で、それを仁王が俺のくじと交換してくれて。
こういう結果になれたのは、もしかするとあいつのおかげかもしんないな。
そういう迷信とか信じないタイプだし
あんなちっこいのが幸せ運んで来れんのかねぇ〜なんてちょっと小馬鹿にしてたけど
手のひら返すわ。
ありがとな。
てんとうむし
end.
おまけ→→→
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わらびもち