セピアってるファーストキス 

当時9歳。ご近所さんの慈郎と共に下校した名前は、いつものように『家で遊ぼう』と自宅の中へ幼馴染を招き入れた。

冷蔵庫に入った冷たい麦茶をコーヒーカップに注ぎ入れ、戸棚からちょっとしたおやつを引っ張り出し、大きめの器にわざわざ移し替えた名前。

ソーサー付きカップ2つとおやつのお皿をオボンの上に乗せた名前は、リビングに居座る慈郎の元へ向かった。


「コーヒーふたつと、朝食セットのサラダになりま〜す」


テーブルに置かれたのは、麦茶とおやつのポテトチップスやらクッキー。
これは最近ハマっている遊び、喫茶店ごっこである。

お客様役の慈郎に一礼したあと、オボンをしまいにキッチンへ引っ込んだ名前はすぐさまリビングへと戻ってきた。


「今日はなに見る?」

「なんでもE〜よ〜。」

「じゃあね、これ見よ!」


テレビ台の下に並んでいたパッケージのひとつを取り出し、ビデオプレイヤーに挿入した名前。

リモコン片手に慈郎の隣に座った名前は、再生ボタンを押した。


「あ〜、寝るやつだ〜。」

「眠れる森の美女だよー。」

「それそれ、ドラゴン出てくるやつだよね〜」


オープニングが流れてすぐに反応を示した慈郎は、おやつのポテトチップスをつまみながら言った。
名前はD作品が大好きなため、テレビで何か視聴するとなると大概がD映画コース。

最初のうちはD作品に無知だった慈郎も名前と遊んでいくうちそこそこ詳しくなった。
今日観る眠れる森の美女はもちろんシンデレラ、白雪姫、アリスバンビ101匹わんちゃんなどなど今となってはお手のもの。

男の子からしたら少年漫画アニメや戦隊ものを観たいところだろうが、その件に関しては文句を言ったことがない慈郎。

大抵映画の途中で眠ってしまうため、言う暇がない。初見の映画は結構頑張って起きて観るほうだが、気づくと寝落ちしているので記憶がまばらである。


「……あ、寝た。」


しばらくして、まだ中盤にも差し掛かっていない段階で寝息を立て始めた慈郎。
いつものことなので別段気にしていない名前は、減りの早いポテチを避け、クッキーばかりを手に取りながら画面に集中した。

起きてる間、ちゃっかりポテチを侵略していた慈郎。名前はおやつを食べる時、均等に食べたい派。


「…私はゼッタイ起きれないもん、キスだけで起きれてえらいなー。」


この映画はそういうことではないが、子どもの解釈は大体こういうもの。

呪いにかけられた姫が王子の真実の愛のキスにより目覚め、物語はエンディングへ向かう。
ふと名前は、隣で眠っていた慈郎を見て興味が湧いた。

慈郎も、キスで起きるのか。


「起きたらジロちゃんのことジローラ姫って呼ぼかな…」


テレビからハッピーエンドソングが流れる中、ソファに手をかけながらゆっくり静かに慈郎へ顔を近づけた名前。

ふに、と、軽くタッチするようにキスした後、1秒もかからないほどの速さで顔を離した。


「…………起きないか〜」


キスだけで起こす王子様すごいなと思いながら、名前はリモコンでテレビの電源を落とした。

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わらびもち

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