ラケットパワー!…OFF
俺のラケットをカバンになおそうとしてくれていた名前ちゃんの腕を引いて、とっさに唇を重ねた。
時間が止まったみたいに周りの音が聞こえなくて、頭が真っ白で、足がふわふわ浮いてるみたいに感覚がなくて。
だけど、唇に触れる名前ちゃんの感触だけはしっかりと感じ取れる。
それが心地よくて、幸せで、5秒くらいの出来事なのに、とても長い時間に思えた。
「た、かさん…」
俺が顔を離すと、名前ちゃんは顔を真っ赤にして俺を見上げていた。
その様子から察するに、心の準備が整っていなかったと見える。
まぁ、それは俺も同じなんだけど…
「心の準備なんてしてたら俺、いつまで経ってもウジウジして出来ないだろうから…」
「…こんな唐突にされたら、心の準備どころじゃないもん……」
へなへなっと力が抜けたように、名前ちゃんの頭が俺の肩に寄りかかった。
「ごめんね、急に…」
「なんかもう…嬉しさと驚きがゴチャ混ぜですよ」
「ははっ…俺も、自分からやっておいてすごい驚いてるよ」
「なんじゃそら!」
肩にもたれかかっていた名前ちゃんが、可笑しそうに笑いながら俺を見上げた。
彼女の笑顔を見ると自然と口角が緩む、よくわからないけど、こういうのを幸せって言うんだろう。
「あ…タカさん」
しみじみと幸せを噛みしめていたところ。
何を思ったのか、名前ちゃんが俺のシャツのボタンに手をかけた。
「えっ…え、えっ?」
ぷち、ぷちっと、次々とシャツのボタンを外していく名前ちゃん。
そんな、まさか、キスだけじゃ飽き足らず!?
俺は名前ちゃんの手から逃れるため、とっさに自分の体をガードした。
「こ、こんなところでダメだよ名前ちゃん!?」
「はいっ?」
「ていうかっ!俺達にはまだ早すぎるだろ!?こういうことはもっと、大人になってから…」
「な、なんの話をしてるので?」
「へっ?」
どういうわけかとぼけた素振りをする名前ちゃんに、首を傾げた。
なんの話って…えっと、つまり名前ちゃんと俺の話が食い違ってる?
じゃあ、名前ちゃんは一体どういうつもりでこんな事を!?
「ボタン…かけ違えてたからなおそうと思って…」
言われてシャツを見下ろすと、ボタンがひとつ、ズレてとまってしまっていた。
そういえば、名前ちゃんを待たせまいと急いで着替えてたっけ…
「……ちょっと、今から川に飛び込んでこようかな…」
「ええっ!どうしたんですかタカさん!鯉ですか!鯉獲りにいくんですか!?」
ラケットパワー!…OFF
end.
おまけ→→→
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わらびもち