不幸中の幸いの幸い 

「……さん、ねぇ苗字さん?あの、苗字さんっ!」

「のわっ!!」

「わ、ごめん驚かせちゃって…はい、プリント。」

「あ…ごめんね!ありがとう。」


授業中。ひたすらぼーっとしていたものだから、前の席の鳳君の呼びかけに反応するのが遅れてしまった。
迷惑かけたな…結構呼んでくれてたみたいだ。

私は急いで鳳君から受け取ったプリントを、後ろへと回した。


「大丈夫?なんだか心ここに在らずって感じだったけど…」


心ここに在らず…鳳君から見た私はさぞかし魂の抜けきった顔をしてたんだろう。

しかし鳳君はそんな私の顔を見て薄ら笑う事も、ドン引きする事もなく、心配そうな面持ちで言った。


「体調が優れないようなら、保健室に行った方が…」

「あっいや、大丈夫!ちょっと考え事してただけなんだ。ありがとう。」

「そう…?わかった。」


鳳君は相変わらず心配そうな顔をしながら、前を向いた。

そうなんだよ、鳳君って優しいんだよなぁ。
席替えでこの席になった時も黒板が見えなくなるといけないからって席変わってくれようとしたり。
窓際の席だから角度的に見えるし、あと鳳君は高身長だけど座高が低いから特に支障がない。ということでこのままになったけども。

本当、細かいところ気遣ってくれて……あの人と大違い…あ〜いやいや!今は授業に集中しよう!そうしよう!



「苗字〜、なんか城之内ってやつが呼んでんぞ。B組のやつ」


昼休みに友達とお弁当を食べて楽しく談笑していると、クラスの男子が私に声をかけてきた。

教室のドア付近を見ると、1人の男子生徒がこちらを伺っているのが見える。


「今週何度目よ。」


ドア付近に立っていた男子生徒をチラ見した友達が、タコさんウインナーを箸にぶっ刺しながら言った。

箸で刺すと挟むのとでは挟む方がお行儀いいよなぁ…などと思いながら、持っていた箸をなおして弁当箱に蓋をした。


「今週、は言いすぎでしょうよ。」

「でもしょっちゅうこの光景見てるよ。先週も呼び出しくらってなかった?」

「うざ。男分けてよ。」

「男だけじゃないでしょ名前は。この前なんか女子にも告られてたじゃん。」

「よりどりみどりか〜やりよるわぁ。」

「まぁ私なら名前はないな。」

「あ、私も。顔はいいけど中身そんなだもん。」

「言いたい放題か〜い」


まったく本当に、良き友達を持ったものだ。
ここまで言ってくれる友達と出会えた私は恵まれてるんだと思う。

恋人、には、恵まれていないが…


「私のお弁当食べんといてよ。」

「はいはい。早いとこ行っといで〜」

「…うん。」

「ほら、あっちにいるから。」

「あ、はい!ごめんね、ありがとう。」


クラスの男子に頭を下げた後、重い足取りで城之内さんという子の元へ向かった。

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わらびもち

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