不幸中の幸いの幸い
「こんなとこに居たんだ。」
目の前の先輩の笑顔に、鳥肌がたった。
なんで、どうしてこの人が私の居場所をピンポイントで見つけ出したんだ?
「だめだなぁ。僕が側に居ないとすぐそこら辺の虫くっつけちゃうんだから。」
「いえ、さっきのは……うっ!?」
突然、全くときめかない壁ドンをされ、肝っ玉の小さい私は肩をびくりと揺らした。
いやいや!今日は近寄らないでって言ってたくせに、そっちからは私に近付いていいと!
先輩は私の顔を覗き込むようにして、ズズイと顔を近付けてきた。
「名前ちゃんには僕が居るんだから、他の男に呼び出されてもほいほいついてっちゃダメだろ?」
「そんな…話も聞かずに断るのは失礼ですし、私もちゃんと断りましたから」
「今度から呼び出されても、無視してくれる?」
「はい…?」
「約束破ったらだめだよ?キミが不審な動きをしたらすぐわかるんだから。それで」
先輩は私の持っていた携帯のストラップへと、視線を落とした。
不審な動きをしたらすぐわかる?わかるって、じゃあ、こうしてここに来れたのは、このストラップのおかげ?
つまりこれはただのセンスのないストラップではなく、センスのないGPS付きストラップ…?
「な!どうしてそこまでする必要あるんですか、こんなことしなくても私、先輩の言う事、ちゃんと聞いて」
「僕に口答えとはいい度胸だ。」
「いっ…」
先輩は私の左手首を掴んで、壁に強く打ち付けた。
手の甲がザラザラした壁に擦られて、鈍い痛みを感じる。
「せっかく僕のガールフレンドになれたっていうのに…そんな好き勝手していいと思ってんの?」
「好き勝手だなんて、そんなつもりは…先輩だって、しょっちゅう、他の女の子と話してるじゃ」
「僕はいいんだよ。キミの大したことないオツムでも、わかることだろ?」
「えぇ、いや…あの、わかりませ…」
「ごちゃごちゃうるさいなぁ〜キミは僕の言う事だけ聞いてればいいんだから、ねっ?」
そう言って先輩は、私の顎を力任せに持ち上げた。
なんでこんな目に。私はただ、普通に、人並みに、恋愛したかっただけなのに。
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わらびもち