薄氷
04
「地獄の方から帰ってきたと思ったら毎回名前ちゃんクタクタなんだけど?!何してんのさ一体!」
此処で会うが運の尽き。まさに一触即発。彼らが出会うと必ずと言っていいほど喧嘩が起こる。そして、今回の口論は名前に焦点が当てられていた。
「折角有能な駒があるのに使わない手はないでしょう?!あわよくば獄卒に入れる算段です!」
「あの子、馬鹿が付くくらい純粋無垢なんだから!お前に渡すわけ無いだろ?!僕が面倒見るんだずっと!!」
「貴方といる方が汚れてしまう気がしますけどね」
ジリジリと見えない視線の火花が散る。丁度そこを通りかかったお香はまたか、と頭を抱える反面、閻魔大王様が目の前にいるというのにそっちのけで口論している二人の先が見えないやり取りに溜息をついた。
「全く…定期的にするよね、この話題」
「そうですねぇ…。こういう時に限って名前さん来ませんし」
「基本呼ばない限り来ないよ…っあ!いいこと思いついた」
「うるさいっ!」
「なんでっ!!」
閻魔大王に飛び火が散った。もはや八つ当たりと言っても過言ではないだろう。思いっきり頬をビンタされた閻魔大王は目に涙を浮かべながら殴られた頬を擦る。過去の失態を思い出し、このままだといい塩梅に北斗七星の傷をつけられたあの時のようになりかねないと仲介に入ることを躊躇った。
「大体、名前さんはいつまでプー太郎を続ける気ですか。才能の無駄遣いですよ」
「ふん、なら僕の店で働かせるね!」
「地獄の方が適性があります。等活地獄、衆合地獄など…」
二人が言い争ったとして、決めるのは本人なのだから彼らの口論に決着はつかない。現に一度もついたことがなかった。
(だから御本人を呼んでこの際決めてもらえば良いのに…って提案したいけど言えない…)
閻魔大王の古傷が疼いた。
「大体ね、僕の方が付き合い長いんだ。ホモサピエンスのデート一緒に見てたし」
「その時点で全然純粋無垢じゃない」
ウホウホと洞窟に入っていく一組のホモサピエンスを白澤はムフフと笑いながら、名前はキラキラと目を輝かせながら見たことがあった。
「とにかく拾ったからには僕が責任持って育てるって決めてるから!放し飼いスタイルなんだよ!」
「あの家族のタマか!」
某国民的アニメのペットの名前が浮上する。断固としてお互い譲りそうもない。当の本人はどうしているかというと、割と大変なことになっていた。
「この気味の悪い金魚草速くすり潰してください!嫌!目があった!!」
「ネコ科の癖に金魚嫌いなんすね…」
「この子たち変な奇声を発するし、何か気持ち悪い…」
白澤が地獄へ出張するというので店の方を桃太郎と一緒に手伝おうと思っていたのだ。しかし、苦手な金魚草を相手に進行状況は極めて困難であった。
「なんでこんなときに限って誰も私を読んでくれないんですか?!鬼灯さーん!!」
「名前さんが呼んでどうするんですか」
それもそのはず、彼らは彼女の事で揉めているのだから。こんなときに誰も呼び出してくれない事を嘆きながら、奇妙なうめき声を発する金魚草と格闘し、疲れ切った白澤が帰宅する頃には、留守を頼まれていた二人も疲れ果てていた。
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