薄氷
07
ここは桃源郷のショッピングモール。そこに桃太郎と名前は来ていた。見るからにワクワクを隠しきれない名前が突拍子もなくどこかに走り出しそうなので、見た目が人間でなければリードをつけて回りたいと思ったほどである。人間の姿じゃなければ。大事なことなので2回も言わせてもらおう。自分にはそのような性癖はない事をご理解いただきたいからだ。
「いきなりどうしたんすか。白澤様にプレゼントをあげたいなんて」
大体の予想はついていた。現世のテレビの影響かドラマだ。そう、彼女は影響されやすい。
「ある映画を観まして…」
今回は映画だった。いつも嬉しそうに語るので聞いてる身としては癒されるものの、行動に移されると何かと頼み事をさせるものだから厄介である。まあ、本人が本当に楽しそうにしているのでついてきた甲斐はある。
「どんな映画だったんですか?」
「敵対組織とやり合って瀕死確定の傷を負うのですが」
何か感動系か、恋愛物の類かと思っていたらまさかのアクション。彼女は戦闘シーンを再現してくれようとしているのか一人で何役もやっていて見ている側としてはあまり内容が伝わってこない。ほんと、可愛らしい風貌でありながら残念な人である。
「恋人からのプレゼントであるペンダントのおかげで急死に一生を得ます」
「そのプレゼントを探すんですね…」
「はいっ。白澤さんはいつも鬼灯さんに瀕死まで追い込まれそうなのでプレゼントが役に立つ日が来るのは近いですよ…!」
プレゼントが物理的に役に立つ日をこんなに楽しみに語る人を桃太郎は今まで見たことがない。そして、大切な人であるなら瀕死の状態になる場面を防ごうとしろよ。なぜ期待してるんだ。
どこか映画との趣旨が違うのだが桃太郎はツッコミをやめた。根本的なところからがまず狂っている。いくら突っ込んでもキリがないと悟ったのだ。
「ここは王道にペンダントでしょうか?ブローチ?」
「もういっそ防弾チョッキがいいと思いますけどね」
様々な系統の店を廻ったがどれもピンとくるものがないようで、名前は眉を八の字にして品物と睨めっこしている。
うーん、あれでもない、これでもない。一人で百面相できる女性ってなかなかいないと思う。桃太郎は趣旨はどうであれ何事にも一生懸命な彼女が人から好かれるのは理解できた。
「こんなに考えて決めたものなら白澤様もきっと喜んでくれますよ」
「ほ、ほんと…?なら、これにしようかな」
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