朝露に濡れし袖
04
前期中間試験準備期間。幸か不幸か私は浅野君と勉強させて貰っている。家が近い事もあって昔から何かと彼は私に世話を焼いた。
「浅野君は優しいね」
「なんだ急に…」
すらすらと書いていた手を止め、いきなり話し出したと思えば省略された単語が多すぎて理解できないとでも言いたそうな目である。完璧な人だけれどこういう時の表情は露骨に現れる。
「幼馴染の特権がこんなに続いてるのが嬉しい。中学生になったら離れちゃうと思ってたから」
成長するにつれて男女の関係性は間隔が空いてくるモノだと思っていた。彼は天才で、周りから人が集まる。彼女だってすぐにできるだろうから、ちっぽけな幼馴染の私とは離れた存在になってしまうと。
「苗字は僕の近くにいるに相応しい人だと僕が思ったんだ。君はいつも自分を過小評価しすぎだ」
そう言ってはくれるものの、私がどんなに頑張って今の順位にいるか、その理由がなにか分かったらきっと幻滅するか、もしかしたら私のことを嫌いになってしまうかもしれない。
私は貴方のそばにいていいほど立派な人間じゃないのに、いつも彼から返ってくる言葉は優しいものだった。
良い成績を取ることに拘っているのは学校の生徒と同じく私もだ。しかし、その理由だって浅野君に着いていきたかったから。下心極まりない不純な理由。
幼馴染の特権だって、私が必死こいて握って離さないだけなのだろう。
「手が止まってる」
思考を巡らせていたら手は自然と疎かになっていた。指摘されて我に帰る。軽く謝れば、「ああ」とノートに視線が向いたまま一言だけ返えってきた。
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