双極
11
「助けに来ていただいたお礼としては小さすぎますが、出来立て、食べてくれませんか」
お椀に注がれたおしるこ。名前の込めた想いに応えるように輝いている気がする。利吉は口に含むと、あんこの甘さに感銘を受ける。
「美味しい」
「ほ、ほんとですか。嬉しいです」
まるで自分のことを褒められるかのように大袈裟に照れる彼女。
ハッと利吉は我に帰る。まんまと彼女のペースに飲まれていた。プロの忍であるというのに情けない。
「出来上がったなら帰るぞ」
「あ、良い子たちに…うわっ」
これ以上彼女のペースに飲まれるつもりはなかった。無理やり彼女を横抱きにするとあっという間に城から抜け出すことに成功した。
「なんでそんな顔が赤いんだ」
ふと、彼女を見ると顔が真っ赤になっていた。まさか小豆に対する思いが比べ物にならないほどある彼女の地雷を踏み怒らせてしまったのだろうか。
「男性と、こんなに距離が、近いことが今までなくて…」
プシューっと湯気が立ったと思うとそのまま気を失ってしまった。
気がつくと保健室で私は寝ていた。利吉さんはどこに行ったのか尋ねると、もうここにはいないようだった。お礼を言わずに別れてしまったのが悔やまれる。
学園長に休んでしまったことを謝罪に行くと、私に怪我がなくて良かったと、何もお咎めはなかった。
「吉野先生…だいぶお疲れのようで」
名前がいない間の小松田との事務作業はよっぽど大変だったようだ。吉野先生に休憩を促しながら、横目で書斎を見ると溜まっていた書類が山積みになっている。
学園中に不在にしていたことを謝ると、名前はやっと本来の業務である事務作業に取り掛かる。
「小松田さんはどうして手紙が私が書いた物ではないとわかったのですか?」
利吉もそうだが、小松田の気づきがなれば、誘拐されたと気付くのはもっと遅くなっていたに違いない。墨汁の滴が書類にボトッと落ちて焦っている彼に聞いてみる。
「名前ちゃんの字って草書みたいで綺麗だなぁって思ってたから、あの時の字はいかにも女の子らしい丸文字で名前ちゃんが書いたように思えなかったんだ〜」
「名探偵みたいです、小松田さん。お陰で助かりました。ありがとうございます」
「えへへ、そう?」
いつも通りののどかな雰囲気を醸し出す。吉野先生は二人の様子を見て、いいコンビだと感じていた。二人は短所を補うことができる相性の良さ、吉野先生は彼女が来てくれたおかげで悩まされていた胃痛から解放されたのだ。二人を見ているとむしろ心温まる。
「ご迷惑をおかけした分を取り返す勢いで頑張りますねっ」
吉野先生の方を見るとにっこりと笑ってそう言った。彼女が帰ってきてくれて本当に良かったと安堵した。
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