双極

06


「届いた薬剤と包帯諸々、ここに置いて置きますね」

「はい。名前さんありがとうございます」

名前が配送された荷物を届けに来たのは保健室。ちょうど新野先生が不在で、善法寺伊作が取り仕切っていた。

「棚に収めるの、お手伝いさせてください」

「…すみません」

収めようとした棚の上にあったものが伊作が引き戸を開けると同時に降り注いできた。それを見た名前はそう申し出た。

手際よく収め直していく。分からない薬剤は彼に聞いていれたため、入れ間違いもなく物事はスムーズに終わった。

「失礼します、伊作先輩…あ、棚替えもう終わったんですか?いつもなら保健室が凄いことになるのに」

「今日は名前さんが手伝ってくれてね…不運は最小限に抑えられたよ」

月に一回、不足した物資を補充する棚替えは保健委員にとって覚悟のいる作業だった。不運に付き纏われた彼らに棚はなだれ落ちてくる。何かハプニングが起こりかなり時間を費やす作業であったため、手伝いに来た三反田数馬と乱太郎は少しばかり驚いているが、なによりもまず先にお礼を述べた。

「そんな、事務員ですから当然です。それよりも、こんな多くの薬を取り扱える保健委員のみなさんはすごいです」

「またまた、僕たちを甘やかして…」

数馬は目線を逸らしてそう言った。褒められて悪い気はしない。むしろ嬉しいのだが、それを気恥ずかしく思う年頃でもあるのだ。真正面から褒められるとむず痒い。

「全肯定系事務員が入ってきたっていう噂は本当のようだね」

「あ、名前さん。タソガレドキ城の忍組頭の雑渡昆奈門さんです」

「やあ。曲者だよ」

(曲者だけど、忍たまの良い子たちはうまく渡り歩いている…利吉さんが言ってた通りだ)

その光景を目の当たりにして名前は利吉が言っていたことを思い返した。曲者と名乗った大男はこちらに友好的なのか、手を肩ぐらいの位置で小さく振っている。名前も思わず手を振りかえした。

「名前さんのこと、そんなに広まってるんですか?」

「城主の機嫌とりとか、敵国の城主を甘やかして没落させるとか…使い勝手いいからねぇ。それが天性のものなら尚更」

「喜車の術ですね」

首を傾げる乱太郎と名前に伊作は説明をする。相手を褒めて油断させる術だと聞くと、名前さんにもってこいの忍術だと納得がいった。

(私忍術使えたんですね。小松田さんに自慢しちゃおう)

それを聞き、嬉しそうに頬を緩める。多くの城から狙われているのを理解してるのかいないのか、呑気な考えが頭に浮かんだ。

「まあ気をつけるに越したことはないよ。じゃあね、名前ちゃん」

天井裏へ入ると彼は手を振った。名前も同じように手を振りかえす。

「だいぶ侵入者に慣れてきましたね」

「はい。利吉さんに慰めて貰ってから、気持ちが楽になりました」

「わあ、さすが利吉さん!」

のどかな時間が流れたと思う。実習終わりで神経をすり減らしていた伊作は名前の存在は忍術学園にとって必要だとそんなことを考えていた。

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