落花流水

005


「てっきりもう着いてるものだと思ってたから今日は予想外の武功だったよ」

「興味本位で彼らの方に近づいたのが運の尽きでした」

「えっ。あのむさ苦しい方に行ったの?やめときなって言ったじゃん」

そらみろと言わんばかりの態度である。蒙恬も遠目から飛信隊と玉鳳隊の持ち場を見かけたが暑苦しくて敵わない。熱量の差は歴然であった。

「確かに。彼らと合同でやろうものなら合わせるのが大変ですね。特に飛信隊の型にはまらない動きとか、玉鳳隊の誇りプライドの高さとか」

自分の性に合わないかもしれないと判断した。もしそのようなことがこの先あったとして、実際になったら彼女が彼らの歩幅に合わせる事は可能だ。しかし、疲れる。というのが本音である。

「それなら俺達上手くやってる方じゃない?武功だって効率よく上げてるし」

彼らと比べたら勿論上手く付き合えていると思う。蒙恬はともに戦っとしても負担にはならなかった。それを言う蒙恬は誇らしげに微笑んでいる。

「ふふっ。そうですね。楽華隊のありがたみを知りましたわ」

「えっ、俺がいないと生きていけない?困ったなぁ、帰ったら早急に式の準備を…」

「この対応にも慣れてきた自分が怖いです」

蒙恬と話す機会が増えて適当にあしらう術を彼女は身に着けた。慣れとは恐ろしいものである。

柔らかな風が吹く。その風を心地よさそうに身に受ける名。蒙恬は彼女の艷やかな髪が靡いている姿がこの戦場から浮いて見えた。

「でも少し彼らが羨ましい」

壊滅させた本陣を見ながら名はそう呟いた。一矢報いて何かを成し遂げたいと思えるものがない彼女は自分とは正反対の彼らを見て何か感じるものがあったのだろう。

「まあ、急がずとも見つかると思うよ。何を目標に戦うかは人それぞれだ」

名は目をぱちくりと瞬かせた。キョトンとした顔で蒙恬を見た。内心を見透かされて且つ自分が一番欲していた解を彼はいとも簡単に導き出したからだ。

「え、何…俺に見惚れるのは分かるけど」

「そうですねぇ…」

「うん、曖昧な返事だね」

蒙恬の冗談も耳に届いていないらしい。先程蒙恬が言った言葉を脳内で繰り返す。

そんな日が来たらいいな。いつか。私にも来るのかな。自問自答を始めた名に周りの声は聞こえていない。遠くを見つめて微かに笑みをこぼした彼女をみて蒙恬も微笑んだ。

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