落花流水

007


総大将を蒙ゴウとした魏国攻めの戦の準備が整った。名の隊も功績が認められ本陣の前列に置いてもられることとなり、兵士たちは嬉しそうだった。玉鳳隊は実力に加えて期待値の高さから更に前の方にいるらしい。少し先の方に姿が見えた。

「うおっ。どこの隊かと思えば名じゃねーか!」

お前らも俺たちより前なのかと苛立った言い方をする信がいた。大凡の予想はつく。王賁が前に行く際に何か言ったのであろう。配置は飛信隊の後ろであることを伝えると若干落ち着いた気がした。

「信殿は相変わらずお元気そうで…少し分けてほしいくらいです。今回の戦、頑張りましょうね、お互いに」

「一応手柄取り合う仲なんですから相手応援してどうするんすか」

名の隣にいる副官らしき人物からすかさずツッコミが入る。当の本人は気にしていないが。

「お互い争ってまで武功を取るほど向上心はないですよ。取れるときに取ればいいんです」

「変わってんなぁ、お前。なんか性格が掴めねぇわ」

武功を積み重ね、天下の大将軍を目指す信には持ち合わせていない考えを持っている彼女の思考が信には理解し難かった。

「よく見ればガラの悪そうな奴結構いるじゃねーか。お前本当に士族か?」

「流石に失礼だぞ信…って、ブフッ」

ケラケラと名の隊の兵士を見て笑う信。士族である彼女が率いる感じの兵士とは真逆の者ががちらほら混ざっていて目立っている。士族出身の兵士とそうでないものの人相に激しい差があったのだ。信に言われて飛信隊の兵士たちも彼らを見た。確かにと納得せざるを得ない。飛信隊の中には笑わないように堪える者。背を向けて小刻みに震えている者もいた。要するに可笑しいのだ。

「うちの隊は半分程悪ガキが混ざってますからね。言われてみれば…ふふっ。いかついわぁ、貴方達」

その人らを率いている本人まで思わず笑ってしまう。今更かよ。と両方の隊からツッコまれる。

「皆私が勧誘しました。どちらの兵士も私の大切な仲間です。差などありません…ふふっ、見た目以外」

「結構ツボにハマってるな」

隊長が美人過ぎて兵士の方にあまり気が回っていなかった。悪人面な兵士は見た目に反して大人しい。ちゃんと見なければ同じ甲冑を着ているのだから気づくことはなかっただろう。

「せいぜい私達に出し抜かれないようにお気をつけて。ご武運を」

「おう。わざわざ挨拶しに来てくれてありがとよ」

配列を整えに彼女の隊は後ろの方に下がっていく。それを横目に羌瘣は信に向けて小声で囁いた。

「気をつけろ、相当頭の回転が早そうだ。見てみろ。近くの隊に話しかけたり、周りの隊をよく見ている。何故かわかるか?」

最初は羌瘣が何を言っているのかよく分からなかった。しかし、さっきの名との会話の風景を思い出す。今思えば巨体の奴だったり、そして、羌瘣を見ていた気がする。あのときの間強い者の様子を把握したのだろうか。羌瘣を見た目で腕の立つの奴だと判断しているその洞察力。そして、初対面の隊に対して顔馴染みでもない隊に挨拶をするということは。信はある結論に至った。そして、生唾を飲む。

「…!他の隊の特徴を掴むことで、自分達が動く策が正確に立てれるのか」

「そうだ。まあその効果は微々たるものかもしれないし、飛信隊に来たのはただ顔馴染みを見つけたからだろう」

「…フッ。アイツの戦いぶりが楽しみだぜ」

冷や汗を垂らす。何を考えているか分からない分、少し恐ろしくも感じた。注意しないといけない相手が増えた訳だ。信の中で名はそのような位置づけとなっていた。

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