落花流水

008


「やっぱり最前線の隊の中で主軸となりそうなのは玉鳳、楽華、飛信隊かなぁ」

1つ目の城を落としにかかる前に名はだいたい予想していたことが的を得ていたことで、少しつまらなそうに呟いた。

「まず最初の城は王賁殿が軸となるでしょうね。信殿も武功を狙って攻めに行くでしょう。蒙恬殿は様子を見てから動きそう…あら、入る隙がない」

戦略を立てている最中にあちゃぁ、と眉を下げる隊長を見て、数人の中心となる部下は溜息をつく。

「…そこを超えてまで狙うお気持ちは?」

「2つ目の城を私達で落としましょう」

「はぁぁぁぁ」

「そんな大きく溜息しなくても聞こえてます。だって、本当に彼らだけで済んでしまうんですもの」

いくつかの選択肢を以ってしても必要となるのは彼らだけだ。それなら無理に戦力を費やすよりも次に回したほうが良いと言ってはのが彼女の意見であった。

「ただ私を信じてみて。大丈夫だから、気付けば彼らと同じくらいの武功をあげてみせるわ。長い目で見ないとね、この戦は長い遠征だから」

余裕に微笑んでみせる。そのいつもと変わらず気張らない雰囲気に、大きな戦を初めて経験する隊士たちは平常心を取り戻した。難癖をつけてくる割に彼らはそれ以上に、手柄以上に、彼女に絶対的信頼を置いているのだ。

1つ目の城では数日間膠着状態が続き、長期戦の構えの戦況に兵の士気は低迷していた。

この状況をどうするのか、名は王賁に注目して待機していた。兵器を準備している様子がみられる。予想通り、王賁は煙幕や井闌車を使って城壁へ突入した。一気に状態は変わる。

「井闌車なんて、実物を見たの初めてだよ…。全然思いつかなかった」

「うちも何か兵器使いますか」

「あれは真似できないよ」

王賁が攻め入っている中、名は蒙恬の動きを見逃さなかった。王賁が門をこじ開けようとしているのを見越して楽華隊が進行している。

玉鳳隊の活躍で城門が開けられた瞬間、蒙恬率いる楽華隊が城内へ侵入し手柄を横取りする形で城は落とされた。

結果、10日以上も手こずっていた城がいとも簡単に決着がついたのである。

予想外だったのは飛信隊の活躍が見られなかったことである。決着がつきそうな頃を見計らって彼女は城内に入った。

他の隊も城が陥落したため、城内に住む民を捕虜として捉えたり、物資を取り上げたりと後始末をするために動き始めていた。

「私達は西の方を片付けに行きましょうか」

住民の物資や武器になりそうなものを取り上げ、ひとまず人を一つの場所に移動させていく。恐怖で震え上がる者もいれば、怨めしそうに連れていかれる者もいる。その目を向けられて当然のことをしているのだ。これ以上彼らを傷つけないためにも残虐な行為はしてはならないと彼女は兵士によく言って聞かせた。

「隊長、東の方に火が放たれています…!」

指を指した方向を向くと東側が火の海となっていた。考えなくとも秦の者が為したことだろう。急いで止めるべく火の方向へ向かう。

「信…殿?!」

そこには燃え広がる火の中に、残虐な仕打ちを受ける女子供。それを指揮していたのであろう将に刃を向けている信がいた。

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