落花流水
013
一人来た道を帰っていた。
蒙恬が言うとおり、今回の作戦は私らしくなかった。私自身、少しリスクのあるような策はそれが最善策でない限り立てない。しかも、今回も玉鳳隊の活躍で事が済んでいたであろう。それを分かった上で武功を上げたのようとしたのは、隊の者に宣言したからというのもあるが、それ以上に、名が感じたものがあるからだ。
その根源となったものは何か。探っているうちに分かったことがあった。
「引け目を感じてたのね。あの3人を見て余計に」
真っ直ぐな信。身分が低いところから頂点を目指す彼が、自分に嘘をつかないその人間性が眩しくて自分の影が濃く感じた。
王賁。名家に生まれながらそれに見合った才能と努力を重ね、自分にもとても厳しく生きてきたであろう。信と同様戦に信念を持っている。私は彼のようにきっと強くはいられない。
そして蒙恬。軍師としての才能は噂を聞いてはいたが、輝いている。蒙家に生まれながら飄々としている彼はその才能を見せつけたりしない。ちっぽけな私を対等に接してくれるその優しさも時にはマイナスな思考を働かせてしまう。
彼らを見ていて自分にどんどん自信が失われていった。そして小さな自分に焦りを感じていたのだ。
それを隠したくて、見栄を張るような今回のらしくない作戦が思い浮かんだのだろう。私自身が自分の小ささを否定するために。
彼らに出会わなければこのような気持ちにならなかったのかもしれない。感化されたのだ。彼らのように、私も戦場で輝きたいと。最初はそんなつもりで戦場に来たわけではないのに。
戻ると宴は終わっていた。大分羽目を外したのが外で寝ているものもいる。
名のような中級士族はある一族に仕えていない者もいる。自分の才能を見いだせる将軍の下につき、昇級を目指していく。天下の大将軍など夢にも抱いたことはなかった。それは今もそうである。
自分の目指す先と彼らの違いだろうが、彼らの背中が大きく見えた。
私は彼らの進む速さについて行けない。いや、出発地点にすら立てていないのだ。なのに、彼らに強く惹かれるものがある。
私も彼らのように強さを持てるだろうか。
蒙恬が先程まで背中にもたれていたためぬくもりがまだ微かに残っている。蒙恬がそのように思ってくれていて嬉しかったのが本音であった。
「やれるだけやったって言えるくらい…頑張ってみようかな」
ここから今までとは違う自分へと変わっていく。ちゃんと戦と自分自身に向き合おうと思った瞬間だった。
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