落花流水
026
2日目以降はは左右の軍も交戦する。秦・左軍の王翦は苦戦していたが、秦・右軍の桓騎は戦を有利に進めた。
4日目、クセの強い桓騎と正攻法を得意とする廉頗四天王・介子坊は相性が悪いということで、介子坊のかわりに玄峰が魏・左軍の指揮をとることになる。玄峰は桓騎の本陣を読み当て、介子坊に攻撃をかけるように命令する。しかし、桓騎は玄峰の伝者に扮装し、玄峰を討ってしまったのだった。
夜。
玄峰が桓騎によって討たれたことを、飛信隊に伝える蒙恬。もっと詳しく話を聞く信をさえぎり、見舞いと称して王賁の元に信も連れて行った。
名はというと蒙恬とは別で飛信隊の陣の方へ来ていた。キョロキョロとあたりを見回しなかなか探し人が見つからないので少しばかり困っていた。
「あっ!アンタはいつぞやの!」
そこへ通りかかったのは尾平。人を探していると伝えるとすぐさま力添えすると彼女の手を持つ。
「飛信隊の顔を隠されてる方と少しばかりお話ししたいのです」
名前を知らないため、容姿の特徴を伝えたところ思い当たる人物は一人しかいないらしく、その人のいる場所へと案内された。尾平に礼を言うと鼻の下を伸ばす。彼はきっとこのことを周りに自慢するに違いない。
一言声をかけて幕を捲るとその人物は深々とこちらを伺っている。怪しまれるのも無理はない。なんせ初めて話す相手がいきなり夜自分の元へ来たのだから当然だと名は推測する。
「…何だ」
「飛信隊の策を講じているのは貴方ですね」
名を見る目が更に鋭くなった。それに気づきながらも触れないように言葉を続ける。
「きっと明日、蒙恬殿の策を請けて飛信隊、玉鳳隊、楽華隊は共闘する事になります。飛信隊の頭脳である貴方に内容を知っておいて頂きたくて」
しばらくの間返事は返ってこなかった。瞳の鋭さは緩んだものの、警戒は一切解かれていないことを肌で感じる。
羌廆は名が飛信隊の作戦を自分が立てている事に気づいたのかと内心驚いていた。信が言ったわけでもなさそうだ。なら、彼女の観察力の鋭さで見出した結果だろう。やはり周りをよく見ていた。
「…聞こう」
そう言ったらどう彼女は取り繕った笑みでありがとうと言った。内心の読めない女だと羌廆は警戒心を解かなかった。
「…という作戦です」
策は楽華隊が一番汚れ役を買ったものだった。こちらを陥れようとしている訳でもなく、寧ろ単体では百割勝ち目のない相手に一矢報いる策であり考えもしなかった。
「お前はあの男が一番の危機的役割を担ってもそれでいいのか」
その質問に対し、名がキョトンとした表情をしたものだから、羌廆はエッ、と思わず拍子抜けした声を出してしまった。
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