落花流水

027


「発案したのも彼ですし…」

それでも汚れ役を買うことに対して何か、思うことはあるだろうと思っていたら本当彼女の返事は淡々としている。ただの作戦の一つだと言わんばかりの異様な落ち着きぶり。

「あの男が好きなんだろ?なら何故…」

てっきり、彼女は彼にそういう感情を持っていたために楽華隊に吸収されたのだとばかり思っていた。何しろ、あの二人の話している姿を見てお似合いだと思う者は多くいるだろう。そのような相手が危険に晒されるならきっと胸の内は苦しい筈だ。

「ふふっ!好意を持って近づいた訳ではありませんよ。理由を付けるならば…そうですね」

もちろん人としては好きだと補足を加える。

「心地がいいからですかね」

そう言って微笑んだ彼女を見て面食らったのは羌廆の方だ。自分も飛信隊の一員として過ごしていく内に信といる事が、飛信隊にいることに心地よさを覚えていたからである。

「今まで地に足つかないまま、戦場に逃げた私にとって彼の言葉に何度か救われたものですから」

そう言った彼女の瞳は優しかった。普段の端正な顔立ちよりもそちらの方が人間味を感じられる。

「今回臨時で入りましたの。急遽当てられた千人では隊としてあまりにも脆いと思いまして」

自分が抱いた疑問を聞きもせずに答えを淡々と述べる。羌廆は空いた口を塞ぐのを忘れた。

「もし、私があそこへ入るとするならば…自分のケジメをつけてからです。逃げ癖に終止符打って」

「…!!」

この女は私と同じだと感じた。彼女が戦場にいることに対して違和感を覚えたのはきっとこのせいだと。そして、自分と同じく変わろうとしている。

「地に足つかずにいるのは…私も同じだ」

すると、やっと自分のことを話し出してくれたのが嬉しかったのか、既に無意識のうちに警戒を解いてしまっていた羌廆の両手を握りしめた。

「貴方は女性ですよね…羌廆殿?」

「なっ…!名前も知っていたのか?」

「名前は尾平殿から聞きました。性別は見たら分かります。こんな可愛らしい顔立ちですもの」

もうペースは完全に名のものだった。年齢は?16。あら、一緒!何処で兵法を?ただの勘で…。策に全く関係のないやりとりが繰り広げられて、羌廆はぐったりとしていた。

「はっ…。男所帯なものですから、嬉しくてつい…らしくない」

ぐったりしたのに気づき、やっと通常の彼女に戻った。申し訳なさそうに眉を下げ、謝り続けられる。しかし、羌廆もいつもより穏やかな表情をしていたことをまだ話してまもない名が知るわけがなかった。

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