落花流水
休憩中
「もっと優等生だと思ってた」
「ふふっ。幻滅した?」
「な訳ないじゃん」
蒙恬はたまに授業をサボって屋上に上がる事があった。今日もそうしたのだが、生憎一人の時間にはならないようだ。先客がいた。
俺にサボりを見つかったというのに焦りの様子はなく寧ろ余裕に見えた。屋上には壁が良い日陰になってベストな環境になるスポットがある。自分がよく座っているところに彼女はいて、俺が座れるようにと少しばかりズレてくれた。ありがたく座らせてもらう。
「此処から吹く風はいつもよりも気持ちいんだよね」
「そうだね。ハマっちゃう」
風に揺られて靡いている艶やかな髪が何かの映画のワンシーンみたい。思えば、今この状況も恋愛物によく出てくるシチュエーションではないだろうか。
「ねえ、付き合ってよ」
「突然ね」
流れに身を任せていった言葉。名の方を向くと、少し眉を下げて困ったように笑っていた。困らせた原因は自分にあるというのにその表情にも胸の鼓動が早まる。
「嫌なら拒んで」
そう言って互いの体の距離が縮んでいく。軽く名の顎を持ち上げるとそのまま自分の唇を近づけた。
一瞬、彼女の体がビクッと震えたが、抵抗する事なく受け入れられた。
「もっと、狡猾な人だと思ってた」
「その通りさ。けど…君の前になると、うまくいかないんだよ」
いきなりキスをされたというのにこの落ち着きぶり。俺ですらかなり緊張しているのに。
脈がないのか、こういった経験が豊富なのか。彼女の感情がわからない。
「これまで何人とキスしたの」
「うん?確か…」
両手の指で数え切れない数程度はしている。
明確な人数が思い出せないほどにも。そこまで感情を抱いた人に出会っていなかったから。今の今まで。
俺の答えを待たずして、名の方から近づいて来た。
「私、初めてだったのよ?」
え?まじか。失礼だがあの落ち着きぶりで、大人びた雰囲気からはそんな風に思えなかったから衝撃的だった。だとしたら、最低なことを俺はしてしまったのかもしれない。
「火遊び程度で終わらせないでね」
「…!」
そういうと彼女は俺を抱きしめた。華奢な体つきではあるが女性らしい感触と多分これはローズの香り。彼女を引き立てる嫌味のない甘い香りだ。
「終わらせてって言っても終わらせないからね。俺さ、名ならずっと好きでいられる自信があるんだ」
「ふふっ。男は言葉より行動で示してね」
キングダム学園内における有名カップルの誕生だった。噂はすぐに広まり名を俺の女神と慕う男子悲鳴をあげ阿鼻叫喚となった数多の教室、わたしの王子がと泣きじゃくる女子による地獄絵図とはまさにこの事だった。
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