落花流水

002


再開するのほ思わぬところでだった。玉鳳隊に先を越され本陣を壊滅されられた現状を見て戸惑う飛信隊。そして、玉鳳隊隊長王賁は飛信隊が百姓出身の集まりであることを侮辱した。その言葉に信が激怒し剣を奮ったときのこと。

「あら、先を越されてしまいましたか」

突如飛信隊が来た方向とはまた別の方向から駆けてきた三百人隊がいた。その先頭に立つ者の姿を見て信は刀を振るうスピードが一瞬緩んだ。その隙を逃さず信は王賁に逆突きを食らってしまった。

飛信隊の何人かは彼女が率いる隊が近づいていることを知っていたが、信は王賁に腹を立てていたことで周りが見えておらず、突然彼女が現れたように錯覚したのだ。

「険悪な雰囲気のところに入り込んでしまったみたいですね。立てますか、信殿」

馬から軽やかに降りた名は膝を付き片手を信の方に差し出した。信はいらねぇ、とぶっきらぼうに答え立ち上がる。王賁はその様子を見て解せぬと眉間に皺を寄せる。

「士族のお前がコイツらに手を差し伸べる必要はないはずだぞ名」

「士族…」

信は名を見た。すると彼女の顔は曇っている。そのまま立ち上がると王賁の方に体を向けて跪く。

「失礼を覚悟の上で申し上げます。私は三百人隊まで上り詰めたのが百姓だからと言って下卑にはできません。だって戦は強い人しか上に立てないでしょう?」

飛信隊は驚いた。士族生まれのこの少女が庇う理由など何もないはずなのに自分たちのために王家の嫡男にむかって諌めていることに。

「お前が庇ったところで所詮蟻は蟻だ」

吐き捨てるかのようにそう一言だけ言うと王賁は名を見下ろして、考えるように彼女を見た。頭を下げているため表情は見えない。中級士族だから同情するところもあったのだろうと後ろの方から野次が聞こえる。

その野次は確かに彼女にも聞こえているはずなのに彼女は怒り出すどころか、平然としていた。そして顔を上げたと思えば余裕な笑みを浮かべていた。

「所詮他人事です。貴方が楯突かずとも実力が伴わねば自然と消えますよ。それなら蟻でも夢を持ったっていいではありませんか」

言いくるめられたのは玉鳳隊であった。その言葉に言い返すものは誰も出てこなかった。王賁も分が悪そうだ。

「目障りな事に変わりはないがな。行くぞ」

撤退していく玉鳳隊。呆気にとられている飛信隊と名が率いる三百人隊がその場に残る。

「では私達も。思ってたよりもっと南に向かう必要があったみたいですね。残念」

そして動き出そうとする彼女。信は慌てて止める。

「もう出発するのかよ」

「ええ。北の方はもう大きな戦がないので南に降りた訳ですが。飛信隊と玉鳳隊がいるのならまた場所を変えないと」

ここで3つの隊が手柄を競い合うなんて面倒なことはしたくないと彼女は言った。それに加えもう一人の三百人隊も南下しているそうなので早く行かないと手柄が取れないと付け加えた。

「ならよ!そうだ、夕飯でも食わねぇか?」

彼女には聞きたいことで溢れていたので信は止めるのに必死だった。その必死さと頑固さに嫌気が差したのか名が折れた。

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