塩味

09


IH直前に名前は東堂に呼び出されたある約束事をした。山頂で待っていろと。

『俺のゴールを確信して待っていてくれ』

『それだけでいいの?』

もっと、すごいお願いが来ると思ってた。

『それだけでいい。巻ちゃんとは僅差の勝負になるはずだ。少しだけ俺の背中を押してくれ』

尽八くん。

あの時、いとも簡単に頷いてみせたけど

私、今、やっと意味がわかったの。

自転車に乗らない私にでも分かった。会場の熱意に感化され鼓動が速くなる。

どちらに勝敗が上がるか分からない場面で、この柵の外から応援している私に背中押せって、変なの、なんて思ってたけど

この会場の声援が、選手の足を回させるんだ。

私も、思うよ。貴方の一押しになれたらって。

「尽八くんっ…!!!」

ゴールを決める白線の手前、尽八くんが微かに笑みを浮かべた気がした。

勝敗が決まる。

高々と腕を天に仰ぐ彼の姿にしばらく釘付けになった。

この喉を伝う汗は夏のせいじゃない。

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