塩味
10
この夏、王者箱学は敗れた。
それぞれ思うところがあるだろう。だが、それは人から揶揄されるものでもなく、自分の中で解決して昇華させていくしかないのだ。
『やっぱ東堂様って…』
五月蝿い。
『わ、私も…東堂様のことが、』
五月蝿い。五月蝿い。
私の彼氏である東堂尽八はこのIHで部活としての本命の大会を終えた。
それまでの間、部活の邪魔をしたくない女子生徒らが最後の思い出作りか、又はあわよくば彼女の座を狙う者が増加し始めていた。
「また呼び出されて大変だなァ苗字」
「はぁ…ちょっと困るよね」
私を呼び出したのは男子ではない。
『東堂先輩の事が本気で好きなんです…だから別れてください!』
顔を真っ赤にしてそう告げる女子。それを応援するため取り巻いている複数人の女子。話したかぎり1年生のようだ。
本人に思いを告げれば良いものを、私に宣戦布告、あるいは別れを強要する者もなかなかの数いる。
これが初めてではないのだが、ここ最近は度を超えていた。
「最近東堂のヤツもコッチ来ねぇし」
「来る暇ないんだろうね」
騒がしかった教室は東堂が来ないため落ち着いた雰囲気を取り戻していた。
「東堂なら呼びされてたよ、2年の女子に」
別のクラスの男子が空いていた名前の前の椅子に跨がり名前に向かい合うように座った。
見た目は…サッカー部だろうか、日に焼けた肌に短髪がよく似合う活気のある男子だった。
「苗字さんもさ、別の男みても良いんじゃない?」
彼自身を指差しながら「俺とか」って指差す。冗談混じりに。
「今年で4年目…?だっけ?もっといろんな人見とかねぇと勿体無いと思うけど」
付き合い始めたのは中学2年の頃だった。自分が話さずとも噂で勝手に広まっていった。指を折りながら年数を数える彼はスゲーッと純粋に驚いていた。
「生憎ね、惚れちゃったのは私の方だから」
それはできないと首を振った。呆気に取られたのは彼の方だった。
「へぇ…てっきり東堂の方からかと」
「ううん、私からなの」
勝機を奪われた彼は魂を抜かれたようにふらつきながら教室を後にした。
「私からなの…ネェ」
ニヤニヤとこちらを煽るように笑みを浮かべる荒北に罰が悪そうに名前は眉を顰めた。
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