星屑
03
「サークルってもう決めた?」
「…いや、まだ入っとらん」
ふーん、と彼女は自分から聞いておきながら興味なさ気に相槌を打った。白身フライを箸で器用に一口サイズに割るとそれを口に運び上品に食べていた。
「それより佐々木さんは何か入らんの?」
「うーん、とりあえずバイト生活かなぁ…。やりたい事がないんだよね」
もう面接を済ましているらしく、近くのスーパーで働いているらしい。どうしてスーパーなのかと聞けばバイト先で重視してたのが家からの近さだったらしく、それに加えて店員になると割引で商品が買えるらしい。意外と現実的な思考の持ち主だった。見た目だけならおしゃれなカフェで働いていそうだったから意外である。
「石垣君はある?やりたいこと」
「俺は…」
“自転車に乗りたい”
頭に瞬時に湧いて出たその言葉が喉に詰まって口にすることは出来なかった。頭では自転車競技部以外の選択肢などなかった。しかし、今の自身の現状を見ると立ち往生したままでなにも動き出していない自分がいることを思い知らされた。
「なんかありそうだね。深くは聞かないでおくよ」
彼女は俺の表情から察して話題を変えてくれた。そして、彼女が神奈川県出身であることを話してくれた。俺から見て彼女が垢抜けているように思えるのはそのせいなのかもしれないことを伝えると、彼女は山のある田舎付近だからそんなことはないと照れながら否定した。
「やりたい事ってさ、何かきっかけが見つかるといいんだけどね。まあ、そのきっかけをどうするかは自分次第なわけだけど」
ひじきの煮物の中に入っている細切りにされたシイタケを一つ一つ空になった平皿に移し替えながら呟いた。シイタケが嫌いなのだろうか。石垣が口を開いたのと同時に彼女も話し始めた。
「悩みも同じだと思うよ。友達や家族に話したところできっかけにしかならない。そのきっかけをどう使うかは結局のところ自分自身にかかってる」
最後の一つになったシイタケをひじきの煮物の中から摘出すると、ようやく彼女は煮物を食べ始めた。平皿のひと隅にまとめられたシイタケが虚しそうにこちらを見ている気がした。
自分の悩みを解決してくれるは自分しかいない。彼女はそういった。確かにその通りだと思う。変に同情されたり、アドバイスされるよりもその言葉は石垣の心に深く刺さった。
「だから、そのきっかけを見過ごしちゃダメだよ・・・ごちそうさまでした!」
「待った。まだシイタケが残っとるやろ。ちゃんと食べなアカン」
「そこは見過ごそうよ。あとお母さんか君は」
名前が立ち上がろうとしたところをすかさず呼び止める。ばれたかとバツの悪い顔をした彼女がすかさずツッコミを入れた。何度かやり取りをした挙句、最終的には名前はシイタケを食べることになってしまった。石垣のオカン節に彼の意外な一面を知って面白かったのと、シイタケを食べされられた苦しみを彼女は忘れることはないだろう。そしてシイタケの恨みはこの先かなり根に持たれることを彼は知らない。
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