星屑
06
「最近よく来るイケメンさん、名前ちゃんの知り合いなの?羨ましいわねぇ」
店内の裏にある在庫のダンボールの山たち。それを仕分けていきながら、店頭に並ぶ補充すべき品を運ぶために台に積み上げていく。一緒に仕事しているパートのおばさんがそのような事を言った。暫く考えて彼女はこう言った。
「リーゼントの人の事ですか?」
「いーえ、ほら、茶髪でタレ目の」
あ、新開か。スーパーで新開や石垣、福富とよく遭遇することが多くなっていた。彼らは部活帰りに3人でやって来たり、個人で買い物にもよく来る。学生マンションやアパートが多いこの地域では割と大学の人と会うことが多かった。
「腐れ縁なんです」
「いいわねぇ。それより、リーゼントの子の方が好みだったのね。確かに真面目で誠実そうだけど!」
単なる世間話だ。話の種にされる事は別に苦痛ではないが、居心地が悪い。思わず墓穴を掘ったせいで顔に熱が籠もった。
「あら、噂をすれば」
今日は部活終わりだったのだろう。お揃いのジャージ姿で店内に現れる。棚に商品を並べていたら石垣と目が合った。さっきの会話を思い出して思わず顔が紅くなる。そして、それを知られたくないので顔をそむけてしまった。
「今日もバイトか佐々木」
「うん。皆は部活帰りだね」
「せや。頑張っとるなぁ、佐々木さん」
労いの言葉をかけてくれる3人に思わず笑みが溢れる。本来はあまりバイト先で知り合いと会うのは避けたいがこの3人は違っていた。
「そうだ、今週末レースがあるんだけど」
新開がまたレース観戦の誘いを受ける。3人ともレースに出るらしい。日程的には空いているのだが、石垣がいる手前どう断ろうかが悩ましい所であった。
「うーん、気が向いたらね」
「一回は観に来いって」
「そうかー、残念や」
え、石垣くんなんて言った?残念?残念、ざんねん、ザンネン…。私が見に行かないことを残念がってくれている。
その時、私の心は大きく揺れてしまった。惚れた弱みという奴だ。
「い、1回くらいなら…」
それを聞いて腐れ縁の二人は驚きを隠せない。硬直してしまった。
「あの佐々木が…」
「寿一、今日は雨が降るぜ」
新開は別に名前に自分の勇姿を見せたいからとか、彼女の事が異性として気になっているから誘っている訳ではない。新開が何度も誘ってもレースを観に来ない事からこうなったらいつか絶対レースに連れて行こうとヤケになって誘っていたのだ。しかし今、何が起きたのだろう。すんなりと承諾を得てしまったではないか。
「じゃ、じゃあね!まだやる事あるから」
逃げるように別の方向に行ってしまった彼女を呆然と見つめる二人。この一連の流れの訳がわからず呆然とする二人を見つめる石垣。
「な、何や。佐々木さんが観戦に行くのそんな珍しい事なんか?」
「ああ、新開が何度誘っても頷かなかった」
「…しつこかったんやないん?」
「…確かに」
「ヒュウ、二人とも酷いな!」
彼女になにか変化があったのか。それとも何度も断っても誘う新開に観念したのかは分からない。しかし、3人とも何処か嬉しそうであった。
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