なんて、そんな日々があったのは、ほんとの昔の話になってしまった。
「沙羅?何してるの?」
教室の窓枠に体を預けて外をぼんやり見つめていたら、友達がやってきていたようで声をかけてきた。もう少し、感傷に浸っていたかったなぁと思いながら笑いかける。
「なんでもないよ、小百合ちゃん」
「なんでもないって顔してないけど。顔色悪いし。大丈夫?」
心配そうに顔を覗き込んでくるこの子は友達の小百合ちゃん。きらきらとしたお姫様のように可愛らしい容姿であるのに、結構サバサバとしていてかっこいい子なのだ。全くどうしてぽやぽやしている自分と馬があったのか不思議ではあるけれど、大切な友達の一人だ。だがしかし、本当のことを話すわけにもいかない。『自分の前世のことを思い出していた』だなんて、それこそ私の頭を心配されてしまうだろう。だからこの茹だるような暑さのせいにして、誤魔化した。
「最近暑いから、ちょっと参っちゃったのかも」
「あーそれは確かに。いきなり暑くなったもんな。気をつけなよ?季節の変わり目は調子崩すこと多いって聞くし」
「あはは、ありがと。気をつけるよ」
「あんたの気をつけるはアテになんないから困るんだけど」
小百合ちゃんは私が無茶をした時のハジメくんみたいな顔をしていた。うむむ、そんなに信用ならないのかぁ。気をつけているんだけども。
「失礼なー。ちゃんと気をつけるよー」
「あのねぇ・・・・・・はぁ、まあいいよそれで。とりあえず気をつけな。最近は不良も暴れてて物騒みたいだし」
「うぇ、不良?小百合ちゃんなんでそんなこと知ってるの?」
「あんたねぇ。うちの学校にもいるでしょうが、不良。それに不良関連の『面倒な女』もいるし。ま、違うクラスだし、あんたみたいなぽやぽやは関わらないだろうから関係ないか」
いたっけなと首を捻るが、頭の中には誰の顔も浮かんでこなかった。面倒な女とは、多分『この学校で有名な子』のことだろう。関わったことはないが、小百合ちゃんが嫌いな子であることはわかる。まあ小百合ちゃんがよく愚痴をこぼしているから知ってるんだけども。同じクラスだったんだっけと声をかければあんな女の話はするなと嗜められる。えーひどい、小百合ちゃんから話してきたのに。
「まあいいわ、それよりあんたこれから帰るでしょ?もう遅いし早く帰ろ」
「うん、ちょっと待ってね」
先行って待ってるからゆっくりきなと教室をでていく小百合ちゃんを横目で見ながら、自分の机に寄って行ってバッグをとる。そのバッグが前世で使っていたリュックサックとダブり、顔を歪めた。ダメだなぁ、私。もう二度と会えないものを忘れられないだなんて。
「・・・・・・暑いなぁ」
ポケモンのいない世界。
手持ちたちも君もいない日常で。
また今年も、君のいない夏がやってくる。