「生きとし生ける乙女どもよ、その愛を貫け」
三ツ谷先天性にょたゆり夢です。
やりたい放題やったのでまじめに注意!
同性愛を貶す描写がありますが、あくまで創作の中のお話なので多めに見てください。
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夢であるのなら覚めてほしいって思うこと、現実には星の数ほど存在する。
でもいくらなんでも、これはないだろう。
それに気が付かなかったのは、きっとあまりにも唐突で、そしてあまりにもいつもと変わらなかったからだ。
何気ない日常。代わり映えのしない風景。古い紙とインクの匂い。かきこみすぎて真っ黒くなった原稿用紙。読み返しすぎたせいでボロボロの本。これで全員殺してやるっていう、脳髄が震えるような苛烈を極める執筆時間。優しくて面白い両親。おはようと笑えば、おうだとかおはようだとか返してくれる声があるということ。寄せては返す波のように穏やかで、目眩く変わる万華鏡のような輝かしい栄光の日々。
私の青春。
この世界で一番大好きなものたちが、寸分狂わず同じように存在していたから。
だから、気が付かなかったのだ。
「辻村さんを好きだよ、だから」
どうか、この思いに応えて。
常日頃は男らしくまっすぐな彼女にしては、飴玉のように愛らしい告白だったと思う。
いつもの優しげな顔をどこかへ置いてきたかのように歪んだ表情。頬を赤らめ涙を溜めて唇をへの字にする姿は、誰も見たことがないくらい女の顔をしている。たゆたうトワイライトの涙がこぼれ落ちそうな瞳を彩って、やけに綺麗だった。白く小さな指が私の制服の袖を弱々しく掴んで震えている。緊張しているのだろう。シンプルで、でもつやつやとした魔力を感じるリップを塗った唇がころころと愛を告げるのを、私は黙って聞いていた。
夕焼けの教室、泣き出しそうに顔を赤らめた乙女、ミルクの飴玉のような告白。
まるで小説みたいだ、素晴らしい。これが現実ではないなら、きっと拗れながらも麗しく目眩く純愛物語が描かれていくことだろう。しかし、これは現実である。しかも彼女が花開いた女の部分を見せているのはどこぞの俺様系に見せかけた兄貴系イケメンでも優しそうだけど性格がヤベェやつな青年でもない。
目の前にいる審判の時を待っている罪人のようにギュッと目を瞑っている乙女の名を、三ツ谷隆という。
男のような名前だけれど、清潔感のある藤色のウルフカットの肩まで伸ばした髪や垂れ目で熟れた光を持つ紅碧の瞳、キュッと線が細くて、けれど出るところは出ている豊満な肢体は女性であることをまざまざと感じさせる。豊かで形のいい乳房が呼吸するたび動くのが、まるで逃げ回るニンフのようだった。
母のような優しさのある中で、潜在的な強さと溌剌とした躍動を感じさせる人だった。素直に可愛らしいと思う。派手というわけではないが、充分男が好きそうな女だ。男はこんな健康的な色香のある少女が普段の勝ち気さを仕舞われてしおらしい様子で告白されたらひとたまりもないだろうな、と思う。
しかし、問題であるのはこの告白を受けているのが私であるということだ。
申し遅れたが、私は辻村菊乃。
生物学上、女に属している。
そして、今気が付いたが、転生者だ。
生きとし生ける乙女どもよ
死亡フラグ満載の世界に転生し、女体化したキャラに告白された。
・・・・・・うん、正直自分でも意味わかんねぇな。
転生、だなんてきっかけがなさすぎてそんな気はしない。そもそもなんで気が付かなかったのかと思考を辿ると、私が過ごしていた現実と全く寸分変わらずに家族や友人が存在していることにそれは帰結すると思う。自分が経験していた現実とこの漫画の世界が融合した、という感じなら納得はいく。
思考の外側に放り出された衝撃の事実をそうやって片付けて、今の状況に向き合うことにする。
目の前に俯く藤色のつむじを見つめながらぼんやり思考する。
女の子に告白されるのは初めてだった。いや別に男に告白されたこともないけど。
ただ、女の子に(友達として)好き、かっこいいと思うとはよく言われる。別に、ボーイッシュとか姉貴系とか、王子様みたいとかそういうわけじゃないんだけど。ただ、私を好きだと言ってくれる子たちには私の何かが心をくすぐるらしい。よくわからないけど好きと言われるのは嬉しいから、特に気にも留めていなかった。
それがまさか、「like」ではなく「love」の方で告白される日が来るなんて思いもしなかった。しかも、少し前まで漫画で見ていたキャラの性別転換した子に!
小さく息を吐きながら思考する。
何かの罰ゲームだったりしないだろうか、いや、そんな人を馬鹿にするようなことを行う人ではないことは、なんとなくわかっている。なら、これは茶化したりうやむやにするべきではないだろう。
深呼吸を一つ。ひくりと肩を跳ねさせる三ツ谷に伸ばしすぎて少しうざったくなってきた自分の長髪を弄りながら口を開く。
「あのさ、私」
「っごめん!」
「は?」
いきなり謝られて目を白黒させていると、三ツ谷はばっと顔をあげた。その顔は羞恥と、悲哀に満ちていた。なんていうんだろう、アンデルセンの、男に裏切られ泡になって消えた人魚姫を思わせる顔だった。
ぽかんと口を開けてほおけていると、彼女はそんな私を眩しそうに見つめながら涙をひとつ流した。拭わなくてはと手を差し出すが、振り払うようにすれ違っていき、教室のドアへと進んでいく。
「ごめん、困らせてごめんな。もう、忘れてくれ」
彼女の花蜜のように嫋やかな涙と、ほろほろと悲鳴をあげるような声が、脳みそを揺らして仕方なかった。
あれはなんだったんだろうか、とモヤモヤしつつも朝日は上るし日は暮れる。そして授業は進んでいく。
ようやくやってきた昼休み。伸びをしながらノートを開いてシャーペンをとる。今度の部活で、コンクールに出すことになっている作品を書かなければならない。しがないいち文芸部所属のモブではあるが、好きな作家のコンクールなのだから、ちゃんと書きたいと思っている。
それでも、思い出すのは昨日の悲劇に包まれた女の顔をした三ツ谷のことだった。
具体的にいえば恋をしている女を書いていると昨日の三ツ谷が思い浮かんで、どうしても特徴がそれに寄ってしまう、という。騒ぐ春色、養花天の乙女、藤色の雪解け。そんな綺麗に取り繕った言葉が、自然とあの紅碧を思い出させて複雑な気持ちになった。
どうして、こんなに彼女のことを考えているのだろう。
こう言っちゃなんだが、彼女はただのクラスメイトで、親友というわけではない。良くてもいい人止まりの、どうでもいい相手のはずなのに。そんな相手が、私の中に入ってくるなんて初めてで、なんだか落ち着かない。初めての告白に浮かれているのだろうか、それとも、なんて思考に浸る。
ああでも、確かに美しいと思ったんだよな。
性別とか関係なく、それでも好きだと伝えた姿は、着飾って化粧をしている同年代の女の子たちよりもずっと、ずっと。
(・・・・・・返事しようかな)
忘れて、と言われたけど。
それでもあんなに純然な告白に、答えないというのはあまりに不誠実だと考えたからだ。決めたことは早い方がいい、と三ツ谷の席をちらりと見るが、おやと目を見開く。珍しいな、と思った。いつもなら同じ部活の少女たちとお弁当を食べているはずなのだが。それなのにいない、というのはどうしてなんだろうと首を傾げた。
それでもこのまま待っていたら昼休みが終わってしまいそうだから、探しに行こうかな、と席を立つと、何故だか教室中の視線が私に向く。は?と瞳を瞬かせると露骨な好奇心と下劣な揶揄が混ざった視線が私に向けられる。なんなんだ、と眉を顰めると、ひとりの少女がにじり寄ってきた。
「ねえ辻村さぁん」
甘ったるく甲高い声にだれだっけこいつと頭を回して、ふと思い立つ。そういえば、こんな顔をしたクラスメイトがいたなと意識の外側で思った。ナチュラルメイクに赤いグロスをつけた、一般的に可愛いと言われるだろう容姿をした女の子。多分、人から愛されるお姫様だな、と思った。こういうやつは大抵、本物の天然か、性格が悪いかの二択だ。
そして多分、こいつは。
「昨日、三ツ谷さんに告白されたって、ほんとぉ?」
性悪の類だ。
「・・・・・・本当だったらどーすんの?」
静謐な声を努めて出して聞くと、女はニマニマと瞳を三日月に細めて笑った。あぁ、こういう、下品な嘲りを隠しきれていない笑み苦手だな、いや苦手だから遮断してたのかな。無言で見つめ返すと、女は体をくねらせて唇を尖らせる。
「えー、だってキモくない?女が女を好きなんてさぁ。でも納得しちゃったんだよねぇ」
「何を?」
「豊満な体で男に囲まれてるのに、男に興味なさそうでおぼこいってコト。男好きでもないならなんでだろうなぁ?って思ってたんだけど、恋愛対象にならないなら納得っていうかぁ?」
てかそれ以上に私らのこと恋愛対象として見てること自体がキモいけどぉと甘ったるい声を教室中に響かせる姿は、可愛らしい化けの皮に隠された、どうしようもなく厭らしい女の本性だった。
クラスメイトたちも同調するようにヒソヒソとした話し声が聞こえる。纏わりつくような負の感情と三ツ谷への揶揄がクラスを支配していく。悪趣味だな、と思った。この女は三ツ谷のことが嫌いなんだろうが、これはないだろう。思わず顔を歪めると女は自分の意見に同調したと思ったのか、甲高い猫撫で声をあげる。
「ねね、三ツ谷さんを振るんだったら、今振っちゃえばぁ?」
「は?」
「だってさっきからそこに立ってるし?」
そう言った女の視線の方を向くと、肩を震わせて俯く三ツ谷がいた。ふるふるとかわいそうなほど震えて、泣きそうなのか体を押さえつける様は哀れさすら感じさせる。つやつやした藤色の髪がさらりと肩から解け落ちるのがこの場で場違いなほど綺麗だった。
「ビアンなんてキモいって言ってやりなよ!そうすればもう絡まれなくて済むよ!きっと勘違いしちゃったんだって、辻村さんが優しいから」
だから早く、とどめを差しなよ。
そう言いたいんだろう。同調圧力の張り詰めた空気が私に襲いかかる。
三ツ谷の方をちらりと見た。かわいそうなほど顔を赤くして、とろりとした涙が、溢れそうだった。
ぷつんと、何かが切れる音がした。
「・・・・・・るせぇ」
「え?」
「さっきからうるせぇんだよ、ブス」
バシン!
「人を貶めることでしかアイデンティティを見出せないなら黙ってろよ。ブスがバレるぞ?」
頬を抑えてへなへなとうずくまる女に、にっこりと笑顔を見せて言ってやる。あぁ、すっきりした!ずっと言ってやりたかったのだ、顔はともかくお前自分が思ってるより可愛くねぇぞって。
なんですって⁉︎とつんざくような金切り声で囀る女に目を細めて舌を濡らす。人を貶めて快感を覚える人間なんぞに、美しさなんてないだろうが。そう思いながらもう一発、ビンタをお見舞いする。それにキッと目を尖らせた女はぎゃあぎゃあと騒ぐ。
「アンタの方がブスでしょ!私は可愛いもの!」
あぁ、うるせぇ。
「ぐだぐだぐだぐだ喋ってんじゃねぇ。アンタがブスなのは外見じゃねぇよ、中身の話してんだこっちは」
ぎゃんぎゃん吠える女を通り過ぎる。三ツ谷の元へ歩いて行って、彼女の手を取るとびくりと震えて、また違う意味で顔を赤くするのが可愛くてクスリと笑った。それに固唾を飲んで見守る聴衆気取りのクラスメイトに、お前らもだと声をかける。
お前らだって、碌な人間にならないのは確かなんだからなと言ってやりながら、燦然と笑って見せる。
「男とか女とかそれこそどーでもいいわ、私が好きな人間は私が決める。私のそばにいていい人は私が決める。他人が指図してんじゃねぇよ」
私の人生は私のものだ。
アンタたちなんかに渡すものか。
「決められたボーダーラインでしか生きられないなら、さっさと死んじまえ」
やべー、授業始めてサボってしまった。
裏庭で二人、座り込みながらの無言の時間。正直、こういうの嫌いじゃないので私はいいけど、三ツ谷はなんか言いたいだろうなと思う。でもなぁ、何をいうべきかと思考を重ねながら目を伏せる。
「どうして、」
「ん?」
「どうして、あんなこと言ったんだよ」
私のことなんて、ほっとけばよかっただろ。泣き出しそうな声がつき刺さる。まぁ、確かにそうだけど。そうしどろもどろになれば、ミルクのような涙がぽたぽた落ちた音がした。
「これ以上私を惨めにするな!」
弱々しい震えた姿が、なんだか放っておかなかったから。だなんて、
そんなことを言ったら逃げてしまいそうだ。
「あんさ、私まだ、アンタのこと好きかどうかわからないんだわ」
「っ、」
「あー違う違う。そうじゃなくてさ」
「私ら、あまりにお互いのこと知らないと思うんよ。そりゃアンタは私のこと見てくれてたのかもしれないけど、それも一面だけじゃん?」
「綺麗だなって思ったから。だから、アンタのこと知りたいって思った。好きになりたいって思った。ちゃんと向き合いたいって思った」
「アンタもさ。これからもっと私のことを知っていってそれでも好きだったら、いーよ。付き合おう」
「だから、友達から始めてくれる?」
そう言葉を重ねれば、三ツ谷はその紅碧の瞳を見開いて、小さく頷いてから。しゃくり上げるようにまた泣いていた。
次回予告
「ただいま、一虎。イザナ」
「あっおかえりぃ!菊!」
「遅かったじゃねぇか」
「私彼女候補できたから、もう会えないわ」
「「は?」」
「そういうわけだから、ごめんね」
ちからつきた
続いたら三ツ谷ちゃんがなんで菊乃を好きになったのかとかを書いてから菊乃の「友人」関連で泥沼になる予定。あと菊乃の兄もまたクセがあって「男に好かれるタイプで初代黒龍に囲われてる」のでそれも書きたい。
菊乃は彼女はいないけど、でもそれ以外がいないとはいってないので。
三ツ谷ちゃん頑張れ!
ちなみに一虎とイザナも女体化です。
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