セフレだと思ってたら、私が恋人だった件




テンプレ夢小説
こういうところあってほしいトレイパイセン
twst夢
トレ監
女監督生

***

不毛な恋をしているな、と思う。
絶対に振り向かないことはわかっていた。男子校に女が一人。いい性欲の捌け口で、いつかは異世界に帰ってしまうから後腐れもないし、体のいいストレス発散用の遊び相手なんだってことわかってる。
けれどそれでも、好きになってしまったから、私はいつも流されている。

生理になってしまった。
妊娠のための子宮の膿を出すための月に一度の厄介なものは、いつも私を憂鬱にさせた。異世界から来た自分の保護者代わりである学園長は何も言わないで、それどころかいつも以上に過保護にあれやこれやの手配と忙しいだろうに「お節介です!」と家事の手伝いまでしてくれる。尊敬はされてないし、生ぬるい目をしてしまうことは一度や二度じゃないが、得体の知れない私にここまで良くしてくれることはありがたいなんて感情じゃ言い表せないほど感謝してる。他の先生たちも理解がある人で、授業のプリントや解説をグリムに持たせて届けてくれるから、元の世界よりもずっと息がしやすい。女だから、生理になったからと言って責められるわけでもなくむしろ気遣って手を回し、一人になりたいと言えば「何かあったら呼んでくれ」と言って一人にしてくれるというのは、この世界にきてから一番驚いたことで「この世界はいいなぁ」と漠然と思った。私たちの世界はいつも息がしづらいから。
優しいと言うならグリムだってそう。最初こそ血の匂いがすると騒いで泣きながら学園長を呼びに行っていた(これは心配してくれているのだとわかっているし、割と好かれてるのかなと嬉しくはなった)が、今は「ちゃんとゆっくり寝るんだゾ!俺様が子分の分までちゃんと聞いてきてやるからな!」と張り切っている。さらに言えばお腹が痛いとうめけば「仕方ないやつなんだゾ」と膝に飛び乗って抱き枕になってくれるような、生意気ではあるけれど優しい親分だ。
だから、憂鬱なのはそこじゃない。
「トレイ先輩に今日は会えないって連絡しなきゃなぁ」
ぽつりとつぶやいた言葉は、私をいつも憂鬱にさせた。その人の名前を呼ぶたびに、私はいつもグレープフルーツみたいに甘酸っぱい苦味を噛み締めている。

トレイ先輩のことをいつ好きになったのか。私はよく覚えていなかった。
気がついたらとか、衝動的にとか、多分そんなところになってしまう。たくさんの男の子がいる中で、私は彼に心を奪われてしまった。
馬鹿だなぁと思う。自分はいつか帰るのに。たかだか自分の寮の後輩の友人止まりの女なんて、相手にされるわけがないのに。それでも、私は叶わない恋をした。叶ってはいけない恋だ。だから墓場まで持って行こうと、すくすく育っていく恋心に重石をかけた。
それなのに、私はトレイ先輩といわゆる「セフレ」と言うやつになってしまっている。
きっかけは、これまた覚えていなかった。ただ、彼を受け入れたその日の熱の大きさは、どこまでも覚えている。
トレイ先輩は、優しい。
やることやった後に、欲を満たして終わりなだけの相手にだって気を遣ってくれるし、ポージングであるのか知らないけど愛を囁いてくれるし、なんなら出かけるような、いわゆるデートにだって誘ってくれる。
それは私を惨めにさせる反面、彼への慕情を募らせる劇薬にしかならなかった。まるで海の底に溺れて沈んでいくように、私は彼のことしか見えなくなっていった。

今日は、ハーツラビュルのお茶会に招待されていた。
けれど、この腹の痛みではいけないだろう。そもそも、学校を休んでるし。事情を知らない人たちからはズル休みって思われてるのかな、あり得そうだなとつらつらくだらないことを考えて、メールの文面を読み返す。
『すみません、今日は具合が悪いのでパーティはいけません』
そっけない文面。でもメールなんてこんなもんだろ、と半ばヤケクソな気持ちでぶん投げる。生理はこれだから嫌だ。自分の感覚を麻痺させる。
ぴこん、とメッセージが返ってきた音がした。おや、と片眉を上げる。珍しい。あのトレイ先輩が、授業中にスマホを見てるなんて。
『大丈夫か?何か手伝いにいこうか?』
優しいひと。きっとなんの下心なんてないんだろうな。いやあるのかも知れない。最近してないから、セックスがしたいのかもな、けれど、今日は無理だ。じくじくと痛むお腹と回らない頭に舌打ちしながら、もういっそ言ってしまおうと文字を打つ。
『今日は生理なので。何もできませんから』
そうしてまた投げた後、頭が重くて目を閉じた。
携帯の着信には、気づかなかった。

とことこと、いい匂いがしてくる。
「・・・・・・?」
「ああ、おはよう。大丈夫か?」
うっすらと目を開けたら、だいすきなひとがいた。手を伸ばして頬に触れて撫でてくれる姿に、これは夢なんだろうかと思いながらも気持ちなくて頬ずりをする。一瞬固まった先輩は、それでも撫でることをやめなかった。
きもちいい、あったかい、すき。そんなホワホワした気持ちで目を細めると、息を呑んだ気配がある。そのマスタード色の瞳に熱っぽい顔をした私が映っていた。なんだか笑い出したくなる。
「せんぱい、すきです」
夢なんだからもう、言って仕舞えばいい。
だって、彼はきっと、こんなこと言っても返事してくれないから。

「ああ、俺も好きだよ」

え?と思ってぱちり。目を開ける。そこには、ちょっとだけ困ったような顔をした、けれど嬉しそうな顔のトレイ先輩がいた。
「とれ、せんぱ」
「ごめんな、きて。心配だったから」
「なんで、」
「恋人の心配くらいするだろ」
恋人?恋人って、なに?
「・・・・・・まあ、いいよ。とりあえず寝てろ。今おやつを作ってる。できたら後で起こしてやるから」
「え、せんぱい、あの、私」
「ん?」
「私って、先輩のセフレじゃ、ないんですか」
そう呆然と口にする私を見て、片眉をあげた先輩は、その言葉を噛み砕いたのか小さく目を眇めた。びくりと肩を跳ねさせると「ああ悪い」と苦笑される。
「そういうことか」
「?」
「これは俺が悪い」
とにかく、寝てろ。その話は後でするから。
そう言った先輩は頭を撫でてくれて、そんな中での言葉だった。
「でも、俺はお前のこと恋人だって今まで思ってたよ」

セフレだとおもってたら、私が恋人だった話