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「やらかしたなァ〜・・・・・・」
小舟の上。偉大なる航路(グランドライン)の海を漂う舟で、ロジャーならぬロゼリアは頭を抱えていた。
あの後、かなり全力で暴れ回ったロゼリアはシャンクスがきたと知った時に逃げた。それはもう全速力で逃げた。シャンクスいるなら自分の出る幕はないだろうという希望的観測と、あと単純にあわせる顔がないだけで。バギーが話しかけたそうに手を伸ばしてるのもわかってて逃げてきたのである。
だってこの状態の俺がロジャーって信じる奴は、いやニューゲートは信じてたけどいないと思ってたし、ていうかそもそもこっちは認知している上で会いに行かなかったのに今更再会とか気まずいじゃん?
ロゼリアは、戦場でロジャー節全開であんなに暴れ回っておいて今更なことを思っていた。馬鹿である。
だからこそ、停泊させておいた小舟に走り、全力で追いかけてくる海軍を撒いて海に出た。多分、全速力だったと思う。
そうしてしばらく偉大なる航路上を漂うこと数日。
ニュースクーの落とした新聞でとんでもないことが載っていたのだ。
「俺の手配書ねぇ・・・・・・」
そうなのである。
ロゼリアがあまりにも暴れ回ったため、エースを取り逃して挙げ句の果てには白ひげも殺せなかった海軍は怒り心頭であるらしく、ロゼリアを指名手配した。限度額である。クソ高いじゃん俺の懸賞金。
だからまあ、ロゼリアは今現在全世界から追われる身なのである。
「これからどうしよ」
まあこうなったのはロゼリアの見落としの甘さというか、まあなんとかなるだろ!という楽観的な考えのせいでもあるのだが、彼女は気づいていない。
ぷかぷか浮いた小舟に揺られながら、ロゼリアは「どうしよこれ」とぼんやり水面を見ていた。
しかし、突如として現れた深海の深い海のような存在感に目を見開く。覇気によって認識したその存在は、ロゼリアにとっては誰よりも覚えのあるものだったので。そして顔が引き攣った。なんだかその存在の空気が波打っており、キレているとわかったからだ。
『やばい。何がって、とにかくやばい』
これである。
慌てて小舟を漕ぎ出して逃げようとするが、近くで水面が弾けるような飛沫が立った。そこから、まるで波動のように荒く打つような存在感を感じてしまう。
「随分な顔色じゃあないか、ロジャー?」
あ、俺終わったな。その低い低い深海の鯨の周波数のような声に、ロゼリアは悟った。だって、その声はロゼリアが、ロジャーが一番恐れている人物の声だから。
「れい、りー」
青褪めて、ひくひく口端を引き攣らせるロゼリアに、レイリーは笑う。穏やかに、いっそ甘やかなほどに。
ただし、目は笑っていないが。
(逃げられると思うな、なんて。その双眼が甘く甘く、煌めいた)
