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海賊嫌いにはどうしたってなれなかった。
なれなかったから、映画みたいな宗教に祭り上げるような熱狂的なファンはいない。それでも、ファンは着々と増えていき、引き下がれないところまで膨れ上がっていく。
好機だ。そう、感じた。ウタにとっての大博打をするに相応しい。
「やっほー!みんなの恋人のウタだよ!」
いつからか、ウタは大衆の恋人なんて名前をつけられるようになった。世界の歌姫で、大衆の恋人。大衆のために恋の歌を歌い、情感を込めた歌い方と熱っぽい目、その傾国の高貴なアメジストの瞳を潤ませてパフォーマンスする姿は確かに、大衆という存在の恋人のようなのだろう。
馬鹿な話。そんなの、公衆トイレと何が違うの?みんなの恋人、なんて言われたら、ついそんなことを思ってしまう。誰かのものではないけれど確かにここにいるみんなの恋人で、ウタにはたくさんの劣情と欲望が向けられていることも知っている。現に、画面に映るものにはただただ歌が好きで、ウタという歌手が好きな人もいるけれど。けれどウタに対してねっとりした目を向けている人間も少なくはなくて。笑顔の裏でため息を吐きながら、ウタはそれでも恋人とやらを演じてやる。
「今日はみんなに、大切なお知らせがあるんだぁ」
きっと、
きっとここで言い放てば、海軍も気づくだろう。ウタの狙いに。ウタがやろうとすることに。だって、ウタウタの実のことだって、世界政府は知っているだろうから。
でもそれでよかった。捕まえさせてやるために、ウタは博打に出ることにしたのだ。
「なんと、有観客ライブをやろうと思います!」
湧き上がる歓声に、終わりの足音を感じながら。
ウタはそれでも笑った。きっとこれがみんなに会える最後だと知っていたから。これでようやく、この世からいなくなれることを知っていたから。
けれどそれでも、シャンクスの、赤髪海賊団の後ろ姿が浮かんで、頭から消えてくれなかった。
***
そして、
『世界の歌姫、処刑!』
『理由はなぜ?向けられた大衆の恋人への刃』
『歌姫の処刑に世界各地で暴動発生!』
