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傾国か、ゆめまぼろしか。
そんな生き物が、世界から愛された歌姫が、静々と歩いて処刑台に上がる。
うつくしいひとだった。ただただ、この世で生きていることが不思議なくらい。だからこそ、ウタ自身を処刑することに躊躇う処刑人がいるほどだった。なぜって彼女は、庇護するべき一般市民の見本のような姿であったので。
しかし、海軍、及び世界政府からすれば、ウタがしようとしていた「全世界仮想現実計画」の罪は重く、ウタが死んだ後に現れるウタウタの実を回収する必要もある。不思議と、海軍がエレジアに手を回すまでにウタは抵抗せず、淡々と従ったが、それに疑問を持つことはない。世界にとっての邪魔者。だから、消されて当然。
ウタ自身も、別に自分が死ぬことに関しては何の感情も抱いていなかった。だってウタは死ぬべき人間だ。たくさんの人を殺して生き延びてしまった。本当は、世間に顔を向けることすら許されない人種だ。それなのに応援してくれる罪のない一般市民を騙して世界の歌姫として上り詰めた。
それだけで、充分罪が重い。
ウタは歪に笑った。ひたすらぼんやりしており、白痴のような禍々しい美しさがあった。それに慄き、驚く者もいたが、ここにいる人々はただウタを世界の異物として睨むのみ。
それで、構わない。本当は誰からも恨まれて死ぬべきなのに、こうやって世界から秘匿されて死ぬなんて、あってはならないことだ。けれど殺してくれるというのだから、もう贅沢なんて言ってられない。
(ああ、でも)
そんなこと思う資格はなくても。
そんなこと思ったって仕方なくても。
そんなふうに思うこと自体が罪であっても。
(最期に、シャンクスたちに会いたかった、なぁ)

そうして、ウタの首に処刑人の振り下ろす刃が向けられて、落ちていく。
それでもまるで揺蕩うように、眠りにつくように目を閉じた。晴れやかな気持ちだった。