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「悪いが、止めさせてもらうぞ」
え、とウタは面を上げた。幻聴かと思った。幻聴であればいいと、思った。
だって、だってここを知るはずがない。処刑されることを知っていたとしても、世界政府が秘匿するこの場所にたどり着くことはできないはずだ。
そして、そういえば、と気づく。
いつまで経っても刃が降りてこないこと。人が倒れたような音がしたこと。永遠に意識が刈り取られなかったこと。
どれを考えてもおかしくて、まさか、いやそんなわけ、と自分の意見を否定する。それなのに、ウタの体をそっと抱きしめた人のことを、よく知っていると思った。
なんで?震える唇で精一杯声を出す。なんでここにいるの?なんで、こんなところにいるの。泣いていないのが奇跡だった。だってきっと、目を開けてしまったら泣いてしまうから。死んだ方がいい人間なのに、助けに来てくれたの。わざわざ、十二年前に別れた娘の、私なんかのために?邪魔だったから私のことを置いて行ったのになんで今更!なんて、思ってもいないことばかりが心からこぼれ落ちていく。
「私、助けてなんて頼んでない!」
それを否定して欲しくてわざと首を振るけれど。それでもウタを抱きしめるその人は、なんの躊躇いもなく口を開いた。
「お前は俺たちの娘だ。助けに入って、何が悪い?」
はっと、目を開けてしまった。視界に入った見覚えのある黒いマントに涙がほろほろ、こぼれ落ちていく。いつだって、会いたいと願っていた人だった。いつだって航海の無事を祈っていた人だった。
自分が迷惑をかけてしまった、大切な、ウタの父親。
シャンクス、と縋り付く声は情けないほど泣きじゃくっている。
「ごめんなさいシャンクス、ごめんなさい」
「謝るな、・・・・・・もういいから、な」
「私のせいでごめんなさい」
「泣き虫になったなぁ」
はは、と低く笑うそのひとは、全く昔と変わっていなくて。恐る恐る抱きしめかえすと、シャンクスはそっとウタを抱え上げた。
「逃げるぞ」
「ぇ、でも」
「たとえいかなる理由でも」
「っ」
「俺は俺の、俺たちの娘を殺そうとするなんてことを見過ごせるような男ではないから、な」
だから、俺のために、攫われてくれ。ウタ
暗転、
