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じりじりと照りつける太陽。
髪を撫でる潮風。
海面からの容赦ない照り返し。
凍っては溶けていく氷の通り道。
痛むお尻。
照りつける太陽。
暑い。痛い。
なぜ移動手段にクザン大将の自転車を選んだのかと、早々に後悔の波が私に押し寄せてきている。
クザン大将がサカズキ大将……いや、元帥と喧嘩をしている間、私だってただぼんやりとしていたわけではない。
ポートガス・D・エースの話を聞き、まず最初にお礼の言葉を伝えに行く海賊は誰がいいだろうかと話し合っていたのだ。
しかし、意外なことに彼の口から出たのは"マキノ"という女性の名前と"ダダン"という山賊の名前だった。
どうも小さな頃に世話になっていたらしい。
じゃあ、まあ、どこにいるかわからない海賊を探して、何日も無駄にするすよりも、居場所がはっきりわかっている人物の場所に行った方が良いだろうという話になり、場所を聞けば東の海にあるゴア王国という国の外れにあるフーシャ村だと教えられて、思わず顔が歪んだ。
ゴア王国と言えば、徹底した"隔離社会"の成功例とも言われていて、ゴミ1つないその国は東の海で最も美しい国だと言われている。
しかし、一歩高い壁の向こうへ出れば、異臭を放つゴミが放置され、そこにはゴミだけでなく人間すらも"要らなく"なれば捨てられてしまう。
なぜこんなことが出来るのかと不思議に思ったが、それが貴族と言うものだし、小さい頃からそう教えられていれば疑問にすら思わないのだろう。
そんな道徳観の失われた貴族達がいるところにこれから行くのかと思うと、私の顔も思わず歪むと言うものだ。
そして何よりも私は貴族が嫌いだ。
あの、人を見下した態度。
しゃべり方。
考え方。
何をとっても好きにはなれない。
中には道徳心のある貴族もいるのだろうが、そんなものはほんの一握りだ。
「……あの、最後じゃあだめですか?」
貴族に会いたくなくてそう言えば、ポートガス・D・エースは呆れた様子でため息をはいた。
『あのな、言っとくがフーシャ村は貴族のいる村じゃねぇぞ。住んでる奴等は皆善良な村人だ。ダダンだって山賊だ。それに、そんなに嫌ならさっさと終わらせちまった方がいいと思うぜ』と最もな事を言われてしまった。
と言うことで、フーシャ村に行くために商船や客船で向かう航路や旅費なんかを調べていると、怪我が回復してきたクザン大将が「俺の自転車で行けば良いじゃない。時間はかかるけど、お金はかからないよ」と提案してきた。
いくらクザン大将が大将をやっていて稼ぎが良かったとはいえ、いくらくらいの貯金があるのかもわからないし、私の貯金だってたかが知れている。お金をなるべく使わなくてすむならそれに越したことはないので、じゃあそれで行きましょうと言うことで話は決まったのだ。
しかし、実際に自転車で移動を始めてみればどうだ。ずっと座りっぱなしでおしりは痛くなるし、潮風で髪はバサバサになるし、日陰が無いものだから直射日光を浴びまくるし、海からの照り返しはきついしで、今のところ良いところはお金を使わなくて済むこと位しかない。
クザン大将は仕事をサボったり、ちょっと近隣の海域に散歩に出たりするときによく自転車を使うが、よく好き好んで自転車で海を渡ろうと思うものだと感心する。
『おい、なんか辛そうだけど大丈夫か?』
私の横をふわふわと浮きながら移動しているポートガス・D・エースが心配そうに私の顔を覗きこんできた。ポートガス・D・エースの質問に返事をする気力すらない私は、ただ首を左右に振って無理だと伝えた。
「あれ?もしかして名前ちゃん、今結構しんどい?」
どうやら、ポートガス・D・エースの質問に答えたことでそれがクザン大将に伝わったらしく、そう尋ねてきたクザン大将にこくりと頷くことで返事をした。
「……あららら。そうとうしんどいみたいだね。もう少しで次の島に着くから、もうちょっと辛抱しててね」
私はそれにも頷くだけて返事をすると、クザン大将の体に回している腕に力を込めた。
それから数時間後に着いた島で休憩をし、ついでに宿を取ることになった。今日、これ以上の移動は私の体力が持たないだろうというクザン大将の配慮だ。
ありがたく部屋で休ませてもらっていると、近くの食堂で食事をする事になり、あまり食欲はなかったが、このまま何も食べないのも良くないと判断して、クザン大将の案内する食堂で軽い食事をする事にした。
クザン大将はしょうが焼き定食を私は消化に良さそうなうどんを注文し、運ばれてきた食事を食べ始めると、横からお腹のなる音が聞こえた。
横を向けば、ポートガス・D・エースがよだれを垂らしながらこちらを見ていて、『美味そうだな。ちょっと食べさせてくれねぇか?』とぽつりと呟いた。
美味そうもなにも、もう死んでしまった彼には実態がないし、食べ物を食べる必要だってないはずなのに、なぜお腹が空くのか。そもそもいったいどうやって食べるつもりなのか。
疑問に思いつつポートガス・D・エースを見ていると、私が箸で持ち上げているうどんに顔を近づけ、口を大きく開いた。
そのままうどんを食べるよう閉じられた口は、うどんも箸もすり抜けていて、ポートガス・D・エースは悔しそうに顔を歪めた。
『くそっ……!やっぱりダメか。どうにかして食えねぇかな……』
ポートガス・D・エースはそう言うと、私の方に視線を移した。
『……なあ、ちょっと体、貸してくれねェか?』ポートガス・D・エースのその言葉と、伸ばされた手にぶわりと肌が粟立った。