女心と秋の空

女心と秋の空
桃城夢



そいつが現れるまで桃の自転車の後ろは私の特等席だった。

ある日いつものように歩いて学校に向かっていると、1台の自転車が私の横を通り過ぎた。

「急がねーと遅刻するぞー」

そう言ったのはいつもなら私を自転車の荷台に乗せてくれるはずの桃の声で、私がいつも乗っていた席には知らない小さな男の子が座っていた。

いつものように桃の自転車の荷台に乗せてもらう予定だった私は、見事遅刻をしてしまった。

教室に着いて桃に今朝のあの子は誰だと気いたら、桃の部活の後輩で越前と言う名前らしい。

その次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、あの越前とか言う子が私の特等席に座っていたため遅刻をしてしまい先生にいい加減にしろと言って怒られてしまった。

いい加減にしてほしのはこっちだよ。全く。

何の権利があってあの越前と言う子は毎日毎日、私の特等席に座って登校しているのだろうか。

しかもあの子、私が桃に惚れてる事に気付いているっぽい。
ああ、本当に。なんて質が悪い。

そして、流石に5日連続で遅刻はやばいと思い早めに家を出れば、そんな日に限って桃は後ろに誰も乗せていなかったりするのだ。

なんて間が悪いんだろう。

「あの越前とか言う子さえいなければなぁ…」

なんて呟きながら向かうのは、ゴミ捨て場。
今は丁度掃除の時間で、ゴミ捨て当番になった私は、大してゴミの入っていないゴミ箱をゴンゴンと蹴りながら歩いていた。

そしてふと前を向けば、憎き越前の後ろ姿。

奴はどうやらゴミ捨て場の掃除を担当しているらしい。
面倒臭そうに、竹箒で有りもしない葉っぱを集めている。

「あ」

そう言ったのは越前で、どうやら私の存在に気付いてしまったらしい。

「あんた。桃先輩の…」越前はそこまで言うと悪戯な笑みを浮かべ「ふぅん…。ま、頑張れば?」と言った。
何て生意気な奴!

桃も何でこんな奴の相手をしてるんだ。理解出来ない。

でも、1番理解出来ないのは、こいつの意地悪な笑みを見て私の心臓が跳ね上がったってことだ。

私は桃が好きなのに、何でこんな奴にときめいてるんだよ。

認めない。認めない。

こんな感情、絶対に認めない!





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うぇるかむ