跡部夢



氷帝学園生徒会室にカタカタとパソコンのキーボードを叩く音だけが響いている。

「……よしっと」

ようやく仕事が一段落した私は椅子に座ったまま両手を伸ばし、うんっ…。と伸びをした。

長時間同じ姿勢でいたせいだろう、背中がボキボキと音を立てた。

外を見ればもう真っ暗で、こんな中1人で帰るのは流石に恐いな。会長が送ってくれないかなぁ…。なんて考えていると「休憩にするか。コーヒーでいいか?」そう言って立ち上がった会長はコーヒーを入れ始めた。

本場ブラジルから取り寄せた良いお豆さんだそうだ。
会長が凄く得意気に話している。

そんなことよりも、今日はこれから雪でも降るのではなかろうかと私は思う。

紅茶なんかを用意するのはいつも私だ。
私がどんなに面倒だと言っても、会長は私に入れさせて自分では絶対にそう言うことはしない。

その会長が自ら進んでコーヒーを入れるなんて珍しいこともあるもんだ。なんて思って呆気にとられていると、いつの間にかコーヒーが入れられていた様で、目の前にずいっとコーヒーを差し出された。

「有難うございます」

私はそれを受け取り、また外を見ると、いつの間にか雨が降っていた。

ああ、ほら。
会長が珍しいことをするから。

会長の入れてくれたコーヒーは苦くて、私には当分この味の良さなどわかりそうになかった。

会長、送ってくれないかなぁ…。

本当に。




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うぇるかむ