ツンなあの子に夢中なの!
 
ツンなあの子に夢中なの!
(海堂夢)



早起きは三文の得とは誰が言った言葉だったか。

ふとそんなことを思った土曜日の朝。

いつもより早く目覚めた私がベランダから見たものは、同じクラスで隣の席で強面で名高いあの海堂君が、うちの玄関の前で我が家の愛猫であるジュリアンナに触ろうとしているところだった。

彼は毎日ジュリアンナを構っているのか、用意周到にもその手には猫じゃらしを持っている。

当のジュリアンナと言えば、ツンと澄ました様子で、猫じゃらしには見向きもしていない。

しかし、私は知っている。ジュリアンナが天性のツンデレだと言うことを。

本当に興味のないものなら、彼女はとっととその場を離れて、別の興味の対象の物のある場所に向かうのだが、それをしないと言うことは、それなりに彼に興味があるのだろう。

しかし、まだお触りの許可は下りていないようで、彼が隙を見計らって触ろうとするたびにジュリアンナは彼を引っ掻いていた。

最近彼の手の甲に生傷や絆創膏が絶えないと思っていたが、まさかうちのジュリアンナが原因だったとは。
喧嘩で作った傷だなんて言っていたのはどこのどいつだ。

そんなことを考えて入ると、海堂君はハーフパンツのポケットから何かを取り出した。

残念ながら2階にある私の部屋からはそれが何なのかは分からないが、ジュリアンナの尻尾がピンと立ち上がったことから、何か彼女の喜ぶ物なんだろう。

猫じゃらしの誘惑にも打ち勝った彼女が簡単に誘われる物と言えば、それは食べ物くらいしかないわけで、思わず「現金な奴め」と呟けば、絶対にあり得ないと思うが、私のその呟きが聞こえたかのようなタイミングで海堂君が顔を上げた。

その海堂君と思わず目が合い、あ、なんて思った時にはもう遅く、海堂君は顔を真っ赤にさせるとまるで逃げるような勢いで走り去ってしまった。

「なんだ。海堂君も結構可愛い所があるんだ」

うちのジュリアンナが怪我を負わせたお詫びに、来週の月曜日には可愛い猫のイラストが入った絆創膏でも彼にプレゼントしようかな。

ちょっと怖いけど。






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